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(投稿:by 僻地の産科医)
産科と婦人科2008年9月号から!
特集は産科医が見逃したくない小児外科疾患
↑そうは言われてもむずかし~(>_<)!!!
というわけで、いつものハワイ大学矢沢珪二郎教授です!
日本よりアバウトなんだか、きめ細かいんだかわかんないような。。。
(妊娠末期、2週とか6週とかのエコーでいいのか??)
糖尿病合併妊娠時の胎児状態の
評価はどのようにすべきか?
ハワイ大学医学部産婦人科(Clinical Professor)
矢沢珪二郎
(産科と婦人科・第75巻・9号(104) p1160-1161)
以下は周産期専門医のVintzileos教授による講義をまとめたものである.
糖尿病合併妊娠時の妊婦管理の目標はHbA1cをなるべく正常範囲に保ち,糖尿病を最適なコントロールの下におくことである.血糖値の正常化の目安は,空腹時血糖が100mg/dL以下,食後1時間値が140 mg/dL,食後2時間値が120 mg/dL以下である.
はじめに
妊娠初期には眼科的検査(網膜),24時間尿クレアチニンクリアランスを調べ,蛋白尿や増殖性網膜症のある場合には妊娠後半に再検査をする.特にインスリン依存性糖尿病の場合には,妊娠を通して胎児状態の評価または監視(fetal sruveillancde)が必要である.
糖尿病合併妊娠所の胎児の管理目標は,以下の5項目の発生を防止することである.
①胎児先天性奇形
②巨大児発生
③胎兄子宮内死亡
④児の呼吸急迫症候群
⑤増殖性心筋症
妊娠初期
糖尿病合併妊娠に伴う胎児奇形の発生率は6~10%である.胎児奇形の主なものを以下に挙げる.
①心奇形(大血管の転位,心室中隔欠損,大動脈狭窄,心肥大など),
②骨格(caudal regression syndrome,神経管欠損,小頭症,hemivertebrae)
③腎(水腎症,腎形成不全,尿管重複)
④消化管(十二指腸閉鎖,直腸閉鎖,左側結腸の小型化)
⑤その他(単一臍帯動脈)
奇形の発生率はHbAlc濃度により影響される,HbA1cが8~10%のとき,奇形発生率は10~13%であるが,HbAlcが10%を超えると,奇形発生率は20~25%に達する.CRL(頭臀長)が小さい場合にも奇形の増加がある,
胎児の頂(うなじ)部に透明部がみられるNT(nuchal translucency)が存在する場合には先天性心疾患の増加がある.NT>5.5mmの場合には心疾患発生率は25%ほどである.増加したNTと心奇形との相関は心奇形の種類によっても相違がある.NT>3.5mmのとき,心奇形の発生率は7%という報告もある.糖尿病妊娠時のNTは染色体異常というよりも心奇形による場合があり,染色体異常の発生率は過剰推定されていることが多い.
妊娠中期
妊娠中期の胎児評価は,その初期と同様,奇形の発見に重点がおかれる.検査としては,maternal serum alpha prolein(MSAFP),超音波検査,echocardiographyなどが行われる.超音波検査では,心,骨格,中枢神経系,腎,消化管などを項目別に調べる.同時にechocardiographyも行う,MSAFPは染色体異常のための3または4項目のスクリ一二ングパネル(triple or quadruple screening panel)として16~18週に行う.
妊娠末期
妊娠末期の胎児管理は,胎児死亡を防止するために巨大児と糖尿性胎児病態(diabetic fetopathy)を発見することが主要目標である.定期的に胎児成長を調べ,羊水過多,巨大胎盤,巨大児,子宮内胎児発育制限,肥大性心筋症などの存在を検討する.巨大児の存在は帝王切開の適応となる.推定胎児体重が4,500 g以上あり,頭囲/腹囲比,大腿骨長/腹囲比,大腿骨長/大腿周囲比の減少で糖尿性胎児病態が示唆される場合には帝王切開の適応である.ただし,糖尿病合併妊娠時の胎児体重の推定は誤差が多いことも銘記すべきである.
【妊娠末期の超音波検査】(検査頻度は症例により異なるが,2~6週ごと)
・羊水過多
・巨大胎盤
・巨大児,IUGR
・糖尿胎児病態(diabetic fetopathy)の指標
→ HC/AC,FL/AC,FL/TCなど
・肥大性心筋症(hypertrophic cardiomyopathy)
妊娠末期にさらに注意すべきことは子宮内胎児死亡である.糖尿病合併妊娠でどのような病態生理学により胎児死亡が増加するかは不明である.母体の血糖値の増加は胎児の血糖値増加をもたらし,その結果,胎児のインスリン分泌の過剰(hyperinsulinemia)がもたらされる.血糖値が上昇すると,胎児は酸血症を発生しやすくなる.さらに,母体の血管障害は子宮胎盤血流を減少させる.その原因を推定すると,このようになるのではないかと考えられる.胎児死亡の危険因子には,さらに,巨大児,羊水過多,妊娠高血圧症などがある.
文献
1)7th World Congress on Controversies in obstet-
rics,Gynecology and lnfertmty. Athens,Greece,
April 2005.
Source.Vintzielos AM :Anteparetum Fetal Sur-
veillance in Pregnancies Compliuated by
Diabetes Mellitus. The Famale Patients,
April 2007.
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