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(投稿:by 僻地の産科医)
日本でも医師不足は問題とされていますが、英国でも同様です(>▽<)!!!
英国での取組みをどうぞ!!!
多様化する社会に即した医師養成/英国
医学部の門戸拡大を模索
Medical Tribune 2008年8月14日(VOL.41 NO.33) p.43
〔ワシントン〕ロンドン大学キングズカレッジ(ロンドン)のPamela B. Garlick博士らは,医学の世界で成功するのに大学入試で必ずしも最上級の成績を取る必要はないとする知見をBMJ(2008; 336: 1111-1113)に発表した。経済面・教育面で恵まれない地域出身の平均的な成績の医学生でも,在学中の最初の2年間で特別な学問的・指導的支援が与えられれば,医学校での学業に不都合はないとしている。
低実績校の優秀学生救う制度
英国では伝統的に,医師は中流階級の専門職であると見られてきた。事実,これまでの医学生の4分の3以上がそうした家庭環境に生まれている。しかし,現在では,国内のさまざまな社会階層・人種を代表する医師がこれまで以上に必要であると認識されており,英国のほとんどの高等教育機関にとって医学部入学の門戸を広げるための発案が重要な要素になりつつある。
今回発表されたのは,こうした発案の1つとして,Garlick博士らがキングズカレッジで2001年から開始したExtended Medical Degree Programme(EMDP)の結果である。EMDPの通達内容は,ロンドン中心部にある学業実績の低い高校に通う優秀な学生にも医師になる機会を与えようというもので,毎年10人の特別受入枠が設けられ,初代選抜学生は2007年に卒業した。医学部入学には,英国の大学入試共通試験であるAdvanced GCE(通称A-level)の試験4科目のうち上位3科目の成績が最低AABでなければならないが,EMDPではこれをCCCとした。
英国の医学部は通常5年制だが,EMDP生は,1,2年の基礎教育課程をもう1年延長して3年間で履修し,一般学生よりも多くの教育指導を受けることができる。
EMDP生のほとんどは,一族で大学進学は自分が初めてという者で,出自も一般的な医学生とは異なっていた。EMDP生には,大学生活になじみやすいように,1週間のオリエンテーション,学生指導員,個別化学習プログラムなどの特別な支援も提供された。
約90%は少数民族の出身
これまでのEMDPプログラム合格者の約90%は少数民族の出身で,中流家庭出身者は約3割と3分の1に満たない。これに対して,一般的な医学生では少数民族出身者は約半分,中流家庭出身者は7割強である。
EMDP生は入学試験の成績が低かったが,在学中の試験成績は1学年360〜400人の学生がいるなかで,かなり均等に分散していた。EMDP生の試験1回合格率は,在学期間全体で見た場合,一般学生よりも若干低めであったが,臨床教育を受ける4〜6回生時の1回合格率は一般学生と同等(93%)であった。基礎教育課程が修了するとintercalated BScという称号が授与され,同時に成績に準じて等級(class)が付けられるが,上位3等級に当たるfirst class,upper second class,lower second classで進級したのは,EMDP生がそれぞれ13%,75%,13%,一般学生がそれぞれ28%,65%,7%であった。
現在200人以上の学生が同プログラムで支障なく学んでおり,Garlick博士は「今回の知見が,学業実績の低い学校から得られたことから判断して,A-levelをAAB以上で通過しなくても,医学部を無事に卒業できる」と結論し,「医学部入学の門戸を広げたプログラムの結果,ロンドン住民の多様性をよりよく反映した新しいタイプの医師が誕生するだろう」と指摘している。
ロンドン大学(ロンドン)心理学・医学教育学のChris McManus教授とBMJ編集部のHugh Ip氏は,同誌の付随論評(2008; 336: 1082-1083)で,医学部入学の門戸を広げて医師の出身背景を多様化することが,多彩な患者をよりよく治療できることにつながるか否かについて論じ,さらに「EMDPプログラムに充当される年間19万英ポンドには,よりよい使途があるのではないか」と問いかけている。
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