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(投稿:by 僻地の産科医)
正直、舛添大臣の結論到達への速さに驚いています!
以前、私は斜陽の「新築」「増床」ピカピカ病院で働いていました。
しかし、その借金を返すためにお給料は低く、常に赤字で、
総務省公立病院改革懇談会 座長 長隆氏をして
「建物がね~」と言わしめた病院で身に染みていたのです。
キャリアブレインニュースより、どうぞo(^-^)o..。*♡
救急体制、「ハコ」より「ネットワーク」
舛添厚労相、現場を視察
(熊田梨恵)
キャリアブレイン 2008年6月25日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/16789.html
舛添要一厚生労働相は6月24日、地区医師会員などによる独自の医療連携や初期救急体制を敷いている東京都江戸川区を視察し、二次救急の疲弊などを訴える現場の医師らと意見交換した。厚労相は視察後の記者会見で、「地域のネットワークをいかにうまく機能させるかが新しい医療体制をつくる際のポイント。ただ(地域救急)拠点病院をつくればいいとか、箱物をつくればいいとかではない」と述べ、地域の実情に応じた医療連携体制の構築を支援していく方向性を示した。来年度予算編成に向け、「安心と希望の医療確保ビジョン」に盛り込まれた救急医療の改善策の推進と、「救急医療の今後のあり方に関する検討会」が提言する「地域救急拠点病院」(仮称)の創設の両者をにらみ、さらに福田康夫首相が7月中に策定すると表明した「五つの安心プラン」も視野に入れながら、いかに地域の救急医療体制の「機能」を描くかが、喫緊の課題になっている。
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厚労省が抱える救急医療体制の整備に関する課題をめぐっては、18日にまとまった「安心と希望の医療確保ビジョン」で、「現行の初期救急、二次救急、三次救急の三段構えを維持しながら、量的・質的充実を図り、救急患者に対し、地域全体でトリアージ(重症度・緊急性等による患者の区分)を行い、院内の各診療科だけでなく、地域全体の各医療機関の専門性の中から、病状に応じた適切な医療を提供できる医療機関または院内の診療科へ効率的に振り分ける体制を整備する(管制塔機能を担う医療機関の整備・人材の育成)」との方向性が打ち出された。
さらに、「救急医療の今後のあり方に関する検討会」が、次回の会合で行う予定の中間取りまとめに、休日や夜間を問わず救急初期対応が可能な医師を常時配置し、空床を確保するなど、診療体制や活動実績において一定の基準を満たしている二次救急医療機関「地域救急拠点病院」(仮称)の整備について盛り込む予定で、来年度予算に反映させる方針だ。ただ、現場からは地域救急拠点病院を地域の実情に合わない「形」だけのものにしてはならないとの指摘が出ている。
また、首相が23日の記者会見で7月中に策定すると表明した、社会保障に関する「五つの安心プラン」では、救急医療の体制強化や勤務医の負担軽減などの対策を示すとしており、厚労相は具体策をまとめねばならない。こうした状況を受け、厚労相は「以前から努力していると聞いていた」という江戸川区医師会が整備する救急体制を視察。二次救急医療機関の松江病院と、夜間診療などを行う区医師会を訪ね、現場の医師と意見交換した。
■区の医療支える「病院診療状況一覧表」
江戸川区は人口約66万人。病院21施設、診療所308施設、医師数は約560人で、一日当たりの救急出動件数は約90件。区医師会による独自の医療連携体制と初期救急体制で、地域を支えている。
医療連携体制では、区内21病院が個々の情報を掲載する「病院診療状況一覧表」を毎年度作成。標榜科目や科目別の患者の収容の可否、専門医の存否、収容可能な時間帯のほか、レントゲンやMRI、腹腔鏡といった医療機器や設備などの有無と共同使用の可否などについて記載している。これに基づき、医療機関は互いの状況を把握して患者を転送し、救急隊が患者の受け入れ先を探す際に活用できるよう消防機関にも渡すなどして連携体制を取っている。新しい病院が開設される際には、現状の体制の補完や調整ができるよう働き掛けており、2002年に臨海病院が開設された際には、区内に当時不足していた小児救急を充実させるため、院長を小児科医にして9人の常勤の小児科医を配置し、連日当直ができる体制を敷いた。
初期救急体制では、医師会の会員や大学病院からの応援により、午後9時から午前6時まで交代で勤務する夜間診療を実施している。午後9時から午前0時までは、内科医と小児科医の2人体制、午前0時から6時までは小児科医1人を配置。このほか、輪番制で内科や小児科、眼科、耳鼻科、産婦人科の「休日診療制度」も行っており、初期救急の2本柱となっている。
<意見交換>
■拠点病院「実際はなじまず」
医師 「休日診療や夜間診療など医師会の会員で担っている。深夜(の診療)だと、次の日が休みなどの土日しかできない。大学の方から応援を求めている現状なので、マンパワーを望みたい」「江戸川区医師会だけでは成り立たないので、院長の人脈を利用して小児科の医局などから応援をもらっている。お金を付ける時に、ただ病院に付けるのでなく医者を増やせるようにしてほしい」
厚労相 「先程『新たな箱物をつくるより、今(の体制)を前提に、拠点病院化だけが改革じゃない』とおっしゃった。例えば、どこかの病院を拠点病院として、実際に動かしてみた経験はあるか。それがうまくいったか、いかなかったか。地域の医療が崩壊していて、拠点病院があっても救急医が足りないので、近くの開業医の先生が今晩は行きますよ、というようにするのは駄目なのか」
医師 「臨海病院の例がある。自分もそこに行ったが、薬や電子カルテなどのシステムが違う。実際そこで動くと慣れないことがある」「だから、地域全体でトリアージしながら、何十年かけて(現在の医療体制を)つくり上げてきた」
厚労相 「きのう総理と会い、『紙で提言してもしょうがないから、現場の声を聞け』ということで参った。そうすると、わたしが予算持ってきて、ぱっと病院を建てるというよりも、医者の数を増やして今までのシステムを満たした方がいいということだろうか」
医師 「そうだ。医者の数を増やす場合も人脈が重要。一番苦労している二次救の医師の人脈を利用して深夜診療をやったから、後方支援がうまくいった。初期診療も人脈使って医師がほかから来てくれた」
■細かい情報発信に一覧表の活用を
医師 「救急は三次救急ばかり問題になり、日が当たる。三次は(医療機関全体の)8%しかない。6割を占める二次救急が疲弊している。二次にはばらつきがあり、かなり(救急対応が)できる三次に近い二次もある。その中で役割分担して地域で担っている。予算や診療報酬を見ても、三次には付くが二次にはない、診療所には付くが、中小病院にはないというのがあり、(このため)二次が疲弊して、その数を減らしてしまった。大田区と品川区全体で1997年から2007年の間に、病院が56から42に減り、27%の減。さまざまな条件で医師が辞めたり、病院を診療所にしたり、介護老人保健施設も看取りをすると言いながら、いざというと(高齢者を)救急車に乗せて病院に連れて来たりする。これは本来の救急車の使い方じゃないから、その辺も考えないといけない。地域完結の医療をしないといけない。消防本部に『何曜日の午後は整形ならいいです』『きょうは内科だから無理』『ホームレスは来てもいいけど入院はできません』とか、もっと細かい情報を発信し、地域の救急隊に教えておく方が効果的では」
厚労相 「例えば、全国の自治体がこれ(病院診療状況一覧表)を持っていれば片付く。強制でできないかとは言っても(難しいので)、地域の医師会にやってもらうしかないが、これ(一覧表)は良い」
医師 「患者も医師も専門医志向。医師会の診療所に親子連れで来ても、老齢の内科医が出てくると、『先生は小児科の専門医ですか』と。『いや内科だ』と言うと、『なら結構です。よそに行きます』ということが結構ある。救急で夜中の何時であろうと、『早く専門医の所に連れて行け』という患者が多い。教育の問題でもある」
厚労相 「総合医みたいなものを標榜するのも、一つの手でもあるということだろう」
医師 「国民が理解してくれるかということ」「トリアージがきちんとされていれば、地域の不満は減る。江戸川区は面白く、『寅さん』が出てくるような地域もあれば、ベイエリアもある。ディズニーランドに昼間行っていて夜に熱が出るとか、『夜間にどうして救急車で来たのか』という患者が多い。いかに振り分けるかだ」
■三次の指定要件緩和も
厚労相 「二次救急の疲弊について、診療報酬も含めて、そっちの方面から改善することはできないか」
医師 「できる。救急を豊かにするには、『医療』を豊かにしないとやっていけないから、皆やめてしまう。三次にばかり補助金が付き、二次を豊かにしなければ、これからどんどん疲弊していく」
厚労相 「三次救急の指定要件を緩和する、というその点はどうか」
医師 「三次に近い二次をつくるより、むしろそこから少し下げて、ということは考えられる」
厚労相 「二次が疲弊して足りないなら、診療報酬からアプローチする方法と、今8%ある三次救急、これをどうするか。それとの絡みがある」
医師 「三次救急の悩みとして、亡くなるような人を三次にどんどん送ると、延命治療で成功した場合、患者を引き受ける所がない。すると三次がいっぱいになる」
厚労相 「トリアージだ。二次、三次の関係も詰めねばならない」
■後方支援は「もうけがない」
医師 「三次が(患者を)受けて助けて、呼吸器が付いている大変な状態であれば、一般病院では無理だから、ICUあるところで受ける。呼吸器が外れたら次の病院を探すが、こう移っていくと、入院日数はどうしても延びる。同じ病名だと今の診療報酬体系では暫減される。受け手(の医療機関)はマイナスの持ち出しで患者さんを診る。それが今の制度だと分かっていて送り先の病院探す。探される方も『冗談じゃないよ』と思う」
厚労相 「周産期のNICUも後方支援がない。診療報酬的にはもうけが減ることになる」
医師 「自分の病院でICU の『受け』をつくっておかないと一般病院に返せない。自分の所で何とかごまかしてやっている状態だ」
厚労相 「広く言うと、医療と介護。介護の方で見られるところはそちらで見ればいい」
医師 「江戸川区はうまくいっている方だったが、ある拠点病院ではスタッフがいなくなるという。新医師臨床研修制度が、各科や各病院の医師の偏在を起こした。今、非常に大混乱している。この制度を根本的に見直して、医者が必要な所に足りるようにしないと、今の混乱は助長される。研修医制度の再検討をお願いしたい」「都立墨東病院では、産科に6人いた常勤医が3人に減り、一番下の女医は月に11回当直していると聞く。そういう状態を見ると、研修医は産婦人科に行きたがらない。外科や小児科に行く人も少なくなった」
■物ではなく、ネットワークを
厚労相 「『安心と希望の医療確保ビジョン』で3つの柱を出した。一つ目の医師数を増やすことは、閣議決定を変えることで、政府の方針になった。二つ目の地域のネットワークをどうするかについて、拠点化(地域救急拠点病院)ということで出したが、そうじゃない形のネットワークのつくり方がここ(江戸川区)にあるということで、急きょお願いしてここに来た。三つ目の国民に対して『コンビニ受診をやめて協力してください』ということで、来週は兵庫県の『県立柏原病院の小児科を守る会』を見ようと思う。一番難しいのは、地域をどうするか。宮崎県は総合周産期母子医療センターがなくてもちゃんとやっている。だから、『物』をつくればいいというものではないという気がする。この(江戸川区の病院診療状況一覧表の)努力を参考にして『こういう取り組みあるよ』と、東京二十三区だけでなく、地域でこれをやればいい」
■ ■ ■
厚労相は視察後の会見で、以下のように述べ、「箱物」として地域救急拠点病院を整備するのではなく、地域全体のネットワークの構築に視点を向けることが重要とした。
「地域のネットワークをいかにうまく機能させるかが新しい医療体制をつくる際のポイントだと思う。ただ拠点病院つくればいいとか、箱物をつくればいいとかではない。『そのお金があればもっとやることあるんじゃないですか』との発言があったように、こういうリスト(病院診療状況一覧表)を作っていて、開業医と二次救急の連携、地域の病院間の連携プレーがうまくいっている。それが一番大事。ネットワークのソフトウエアがある。建物というのはハードウエア。両方そろった方がいいのだが、ソフトウエアでうまくいったところを現実に見たかった。『安心と希望の医療確保ビジョン』をブラッシュアップしていくためにも現場を見る。それは首相のご意向でもある」
厚労相は二次救急に対する支援は診療報酬による手当てを検討するとした上で、今後も二次救急を担う公立病院など、現場の視察を続ける考えを表明した。来年度予算の概算要求を前に、地域の救急医療の改善のための支援策を、形だけでなく実際に機能するものにできるかは、厚労相が今回見る「現場」の声に、厚労省としていかに耳を傾けるかに懸かっている。
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