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(投稿:by 鶴亀松五郎先生)
鶴亀松五郎先生から、論文の紹介ですo(^-^)o ..。*♡
アメリカではすでに下院で
「医療民事裁判における「苦痛を伴った」理由での
請求額上限を設ける」
という法案が通っている
(悪魔の味方 米国医療の現場から p90)ことをみても
医療裁判は世界的に問題になっていることは伺えます。
防衛的な医療:
医療裁判への医師の恐れは
貧弱なペイシェント・ケアをもたらす
#The Joint Commission International Center for Patient Safety (ICPS)
The ICPS newsletter August 2006, Volume 2, Issue 8
Defensive Medicine: Physicians’ fear of lawsuits may cause poor patient careから
http://www.jcipatientsafety.org/15421/
医療裁判への恐れは、医師にとって財政的な難題の原因となるが、医療裁判への恐れによって、医師が不必要なケアを提供することで彼らの患者をより大きな危険にさらしているのではないか?最近のアメリカ医師会誌によると、ペンシルベニア州の医師の93%(注:ペンシルベニア州は医療裁判に対する医師への規定が全米一厳しいことで知られている)が、ときどき、あるいはしばしば、防衛的な医療を行ったと答えている。
防護的医療とは-裁判の恐れのために、本来行われるべき正しい医療行為からかけ離れること診療を行うこと-医師が、
(1)必要以上に検査をオーダーする
(2)医学的な適応以上に薬を処方する
(3)臨床的に必要な手技やインターベンションをさける
(4)必要がないのに患者を専門医に紹介する
(5)確定診断をするために不必要な侵襲的手技を考える、ことである。
防衛的な医療はケアが適切であるとの安心感を医者に与えるが、結果として患者が障害やエラーにつながる可能性のある検査や手技を通常以上に受けることになるので、患者をより高いリスクに置くことになる。加えて、防衛的医療を行う医者は患者の医療コストを上げ、より多くの患者が不必要な検査や手技を勧められるために医師が提供する医療サービスがすし詰め状態となって、患者の医療サービスへのアクセスを減らすことになる。
《医師の観点》
William Jacott医師(ICPSのスペシャル・アドバイザー)
防衛的な医療を行う医師は、特に新しい問題でもない。それは第二次大戦後、医療過誤が真の意味で開始した時にさかのぼる。何年もの間、全ての根拠は裏づけに乏しく医療行為を細部にわたって書き留めた研究も多くはなかった。事実、防衛的医療がヘルスケアのコストを25%上げたという初期の見積もりはデータに基づいておらず、単なる推測にすぎなかった。
過去数年間、JAMAの2005年6月号や救急医学誌の2005年7月号の記事のような防衛的医療の正当な研究が出版された。これらの出版物のデータで防衛的医療が広く行き渡っていることが確認された。そのなかでは、過剰な診断テストのオーダーや不必要な紹介、ハイリスク患者を避けることが、防衛的医療の最も共通した形であることも確認された。
検査のオーダーを出し、専門医に紹介して、あるいは医療過誤裁判を恐れるあまり患者を診察したがらない、医者の姿が描かれていたのは不幸である。結果が正常であろうと知っていながら、ムチウチ症のためにいったい何枚の頸部X線を、頭痛のためにいったい何枚のCTをオーダーしたことであろうか?それは、浪費であり、無駄であり、時には侵襲的であり、しばしば痛みを伴うものである。
簡単な解決法はない。この防衛的医療は増える傾向にあるだろう。しかしながら、ICPSの最近のポリシーである「岐路に立つヘルスケア:医療の責任システムと患者への障害の予防のための戦略」の中には有益な解決策が与えられている。 これらの勧告は限定されてはいないが以下の内容である。
*医師が開発し、根拠に基づく臨床ガイドラインを適切に遵守することを奨励する
もし、ガイドラインが、ある条件のときにはX線をとる必要がないと述べているのなら、医師は自信を持って検査をオーダーしないことを選ぶことができる。多くのガイドラインは個人のデジタル機器からダウンロードできる。
*チーム・トレーニングを通してチームワークを広げることを支持する。多数のヘルスケア専門職を一人に患者のケアに巻き込むことで、検査や主義をオーダーしない決定を強化することができる。
*患者と医師の間の開かれた意思疎通を促進する。患者は活動中のヘルスケアチームの一員に加えるべきである。有害事象が起こった時には、ヘルスケアチームのリーダーはまた、医師と患者の間、あるいは医師と家族の間の開かれた意思疎通を奨励すべきである。
示唆されたようなこれらの解決策であっても、防衛医療を除去することはないだろう。専門門職としての責任がある限り、こういった状況は起こる。我々は、専門職としての責任の適切な改善、適当な患者の安全への処置、患者のケアに対する医学的ガイドラインを使うことに対する自信、があれば、行動にいくらかの変化をもたらすことができる。
僻地の産科医先生、エントリーでの紹介ありがとうございました。
見直してみると、訳文が硬いです(恥)。
でも、皆さんには言わんとするところはわかっていただけたかな?と思います。
仰るとおり医療裁判は世界的な問題となっており、サッチャー首相時代にボロボロになったNHSの建て直しを図っているイギリスの労働党政権も産科の民事訴訟を2005年までに25%ほど減らすことをマニフェストに挙げていました。
NHSは民事裁判の補償金をNHS Litigation Billから捻出しているので(元はと言えば税金)、訴訟コストの削減で他にお金をかけることを急務としているようです。
投稿情報: 鶴亀松五郎 | 2008年6 月16日 (月) 23:37