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(投稿:by 僻地の産科医)
「たらい回し」は減ってない?!
報道のあり方を考える
M3com 橋本佳子
6/3号では「医療事故における実名報道」の問題を取り上げました(書類送検時での実名報道に県医師会が異議 - 報道のあり方を考える(1) ) 。今日も引き続き「報道と言葉」をテーマに考えてみます。
今年の初め、このコーナーで、「来し方を振り返り…」として、2006年と2007年の医療界を表すキーワードとして「医師不足」「医療崩壊」「医療事故」などを挙げ、「日経テレコン」を使って、朝日、読売、毎日、日経の4紙を検索しました。その結果、2006年は医療事故関連の記事が多く、2007年に入ると、医師不足をめぐる話題が増加したという傾向が見られました。
この記事を見た先生からいただいたのが、今日のテーマです。救急患者の搬送問題を報道する際の言葉は、「たらい回し」か「受け入れ困難」か。
検索した結果、下記の通りになりました。同じく「日経テレコン」で、朝日、読売、毎日、日経の4紙について、記事のタイトルと本文を検索対象として、「救急」と組み合わせて下記の言葉を調べました。
2005年 2006年 2007年 2008年(1~4月)
救急+
たらい回し 13件 23件 84件 103件
受け入れ拒否 1件 7件 105件 103件
受け入れ困難 1件 2件 4件 7件
受け入れ不可能 0件 2件 6件 1件
以前、このコーナーで、「たらい回し」にはあたかも医療機関の身勝手で搬送の受け入れを断っているかのようで問題であり、実態を一番的確に表しているのは、「受け入れ困難」ではないかと書いたことがあります。
実は、一般紙の報道も変わってきたのでは、と想定して調べたのですが、期待は裏切られました。「たらい回し」だけではなく、「受け入れ拒否」も多く、「受け入れ困難」は少数派。あまり耳慣れない言葉であるため、読者へのアピール度に欠けるためでしょうか……。
しかし、言葉は大事。言葉の使い方次第で、受ける印象が大きく異なってきます。救急医療の現状を世間一般に広く理解してもらうためには、やはり言葉の使用は厳密であってほしいものです。
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