(投稿:by 僻地の産科医)
妊娠性急性脂肪肝の文献集めの一環ですo(^-^)o ..。*♡
あれあれっという間に悪くなるんですよね。あれ。
稀な症例であるとともに確定診断が、肝臓の病理標本。
報告数が少ないのはそのせいもあるかもしれません。
(解剖したとか、運よく生還した後に生検するか。)
こちらもご覧ください→妊娠性急性脂肪肝の1例
【参考ニュース】
損賠訴訟:妊婦、胎児死亡で遺族が提訴 沼津市など相手に /静岡
毎日新聞 2008年5月30日
http://mainichi.jp/area/shizuoka/news/20080530ddlk22040194000c.html
【さらに参考ブログ】
産科医療崩壊 産科崩壊地域静岡へ毎日新聞静岡支局が強力アシスト 極めてまれで致死率が高い急性妊娠性脂肪肝(その4)現在でも原因不明の「急性妊娠性脂肪肝」だが胎児側に原因があり、母体に致死的な肝機能障害を起こすという説が有力
天漢日乗 2008-05-31
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/05/4_4fa6.html
産科医療崩壊 産科崩壊地域静岡へ毎日新聞静岡支局が強力アシスト 極めてまれで致死率が高い急性妊娠性脂肪肝(その5)順天堂大学附属静岡病院までの車での所要時間は2時間
天漢日乗 2008-05-31
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/05/52_f9ba.html
急性妊娠脂肪肝
医療報道を斬る 2008.06.01
http://plaza.rakuten.co.jp/tinyant/diary/200806010000/
ではどうぞ ..。*♡
HELLP症候群 急性妊娠脂肪肝
佐川典正
三重大学大学院研究科産科婦人科
(産科と婦人科・2005年・119(13)p1377-1381)
HELLP症候群の中心的な病態は末消,とくに肝動脈の血管攣縮を伴う微細血管障害性溶血性貧血(microangiopathic hemolytic anemia;MHA)である.HELLP症候群と診断されたらできるだけ早期に妊娠の終了をはかる.通常、妊娠の終了は帝王切開術が選択されるが、血小板数やDICの合併に十分注意して臨む.
急性妊娠脂肪肝(acute fatty liver of pregnancy ;AFLP)は,妊娠に伴って発症する脂肪肝である.AFLPの発生頻度は1/10000とまれではあるが.症状は劇症型で.母児ともに予後不良のことが多く,早期の診断と適切な治療が重要となる.AFLPの治療も基本的にはHELLPの治療に準ずる.しかし症状は急速に悪化するので、AFLPと診断されたら,可及的早明に妊娠終了をはかる.
はじめに
産科医療はその80%は大きな合併症のない正常妊娠であるが,残りの20%は母児の良好な予後を得るためには何らかの医療の介入を必要とする.さらに、そのうちの10%前後(全体の数%)では,重篤な合併症妊娠となり,適切な診断と治療が行われない場合には、母体の生命予後が不良となる.ひとりの産科臨床医が母体生命予後に関わる重篤な肝疾患合併妊娠を経験する機会は限られている.しかし,母児の良好な生命予後を得るためには、初めて遭遇する病態であっても早期の診断と的確な処置を行う必要がある.そのためには,そのような病態がきわめて低頻度であっても一定の確率で伴いうるという妊娠の特殊性を認識・理解したうえで日常臨床に携わることが肝要である.
HELLP症候群
1.病態
妊娠中には肝機能異常を件う病態があることは、19世紀半・ばに病理学者virchowによって報告されている.その100年後には、Prilchardらが.子癇患者では肝酵素上昇のほか溶血、血小板減少を伴うことを報にした。その後,Weinsteinらは重症妊娠高血症候群(妊娠中毒症)の一部にもこのような病態を伴い、予後不良な群があることを報告しその主症状である溶血(hemolysis)、肝酵素上昇(evated liver enzyme)および血小板減少(low platelet count)の頭文字からHELLP症候群と提唱した。その後の研究で,重症高血圧症や蛋白尿など、妊娠高血圧症候群の症状を必ずしも伴わない例もあることから、妊娠高血圧症候群とは異なる病態との考えもある.しかし,その中心的な病態は末梢、とくに肝動脈の血管攣縮を伴う微細血管障害性溶血性貧血(microajlgiopathic hemolytic anemia; MHA)であり、その意味では妊娠高血圧な候群と共通の病因的背景を有すると理解できる.通常、妊娠高血圧症候群を合併した妊産婦の妊娠末期に発症するが、約1/3では分娩後に発症する.まれではあるが、妊娠20週までの発症もあるので注意する。
MHAを背景とする疾患としては、HELLP症候群のぼかに直栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytcpcnic purpura; ITP).溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome;HUS)がある.これらの疾患は全身の血管攣縮を伴うMHAを背景とし.HELLP症候群は肝動脈に、TTPは脳血管系に,HUSは腎血管系に強く障害が現れたものとも解釈できる.したがって、これらはいずれも妊娠に合併する可能性がある、子癇では肝酵素の上昇や血小板減少を伴うこともしばしばあり、TTPに類似した病態であるとも理解できる.また.常位胎盤早期剥離では、その1/3が妊娠高血圧症候群に合併し高血圧や浮腫等の症状の急激な悪化に引続き発症することから、MHAを伴う子宮動脈領域の攣縮が関与しているとの考え方もある.これらの疾患でそれぞれの臓器を支配する血管が特異的に障害される機序についてはほとんど明らかにされていないが.いずれの臓器も血流量が豊富な臓器であり.また、悩血管系以外は妊娠にともない増大する子宮により血流障害が発生しやすいという共通点があることから,虚血再還流ストレスなどの関与も推定される.
2.診断のポイント
発症時期多くは妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)に合併し.妊娠28~40週に発症するが約1/3は分娩後に発症する.
症状初発症状は突然の心痛部痛(65%)、悪心・嘔吐(36%)など,上部消化器に関する症状が多い.そのほかの症状は、表1のとおりである.心窩部痛は急性胃拡張により,悪心・嘔吐,黄疸は肝機能障害による.出血傾向は血小板敷の低下により,頭痛と視野障害はHELLPの背景因子である血管掌編が頭部血管領域にも生じていることを示す.
検査所見 溶血(貧血,LDH上昇、間接ビリルビン上昇.ハプトグロビン低下、赤直球破砕像)、肝機能異常(AST、ALT、LDH上昇)、血小板低下がみられる.症状が進行するとこれらに加えてFDP/FAT,PICの上昇やfibrinogenの低下、antithrombinⅢの低下など、DICの所見がみられる.また,高血圧、蛋白尿、浮腫など,妊娠高血圧症候群の所見は約80~90%にみられる、HELLP)症候群の診断基準を表2に示す。
3.治療
HELLP症候群の治療の基本は、その原因の除去、すなわち妊娠の終了である.通常の妊娠高血圧症候群と異なる点は、DICや腎不全など、重篤な合併症の治療を同時に行う必要があることである.HELLP症候群の治療の概略を表3に示す.
HELLP症候群と診断されたらできるだけ早期に妊娠の終了をはかる.通常、妊娠の終了は帝王切開が選択されるが,血小板数やDICの合併に十分注意して臨む.必要に応じて輸血や血小板製剤、ATⅢ製剤などの準備をし場合によっては手術に先立ってDlCの治療を開始する.先に述べたように,HELLP症候群の病態には血管攣縮によるmicroangiopathic hemolysis(MAH)が深く関わっていると考えられるので、硫酸マグネシウムやNO供与剤.塩酸ヒドララジン、カルシウムブロッカーなどによる血管の拡張と高血圧の治療を行う.同時に、全身の循環不全を改善するために.副腎皮質ホルモンの投与(ベタメタゾン12mg筋肉内投与を12時間ごとに2回)が有効であるとの報告がある。そのほか、合併症の治療を並行して行う
183例ののHELLP症候群の検討では、2例の母体死亡をはじめとして.常位胎盤早期剥離、子癇など母体生命予後にかかわる合併症が高頻度に発症する(表4).母体死亡の原因としては、脳出直、凝固障害、急性呼吸窮迫症候群、腎不全,敗血症などがある.重症例では多臓器不全への対応が母体生命予後に重要である.すなわち,高度溶血に対してはハプトグロビン投与、腎不全に対しては人工透析、肝不全に対しては血漿交換、肺水腫に対しては人工呼吸器管理などを、時機を失することなく行う.肝被膜下血腫を伴う症例で破裂を起こした121例の検討では死亡率は30%ときわめて高かった.救命のために緊急で肝移植を行った症例報告もある.また、HELLP症候群の管理に当たっては,副交感神経遮断薬(硫酸アトロビン、プスコハン、ダクチル、副交感神経遮断薬を含む胃腸薬など)の使用は,胃拡張を増悪するので禁忌である.
急性妊娠脂肪肝
1.病態
脂肪肝とは,何らかの脂質代謝異常のため,肝小葉の1/3以上.の領域で,肝細胞に著名な脂肪滴の蓄積を認め、それ以外の形態学的異常を認めないものと定義されている.急性妊娠脂肪肝(acute fatty liver of pregnancy; AFLP)は妊娠に伴って発症する脂肪肝である.発生頻度は1/10,000とまれではあるが、症状は劇症型でで、早期の診断と適切な治療が行われない場合は母児ともに予後不良のことが多い.AFLPの病因は、ミトコンドリアの脂肪酸β酸化に関わるlong-chain 3-hydroxyacy1-CoA dehydrogenase (LCHAD)のsingle codon mutationによる欠損が原因ではないかとされているが,詳細は未解明である.この疾患は常染色体劣性遺伝で,homozygousの小児はReye症候群を発症する.Hetcrozygousの女性が妊娠するとAFLPを発症する可能性があるが、胎児がhomozygousの場合にAFLPか発症すると考えられている.したがって、夫も妻もhelerozygousであった場合、次回妊娠でのAFLPの再発は25%であるとされている.また,Hetrozygousの母体でも約40%にpreeclampsiaやHELLP症候群がみられたとの報告もある.
2.診断
発症時期 通常妊娠後期~末期であるが.産後の発症もありうる.
臨床症状 悪心,嘔叶、全身倦怠,易疲労性、黄疸、腹部痛、コーマなどである.
検査所見 ビリルビンの軽度上昇、AST.ALTの上昇(300~500U/L,ときに1,000IU/L以上のこともある).プロトロンビン時間の延長やantithrombinⅢやnbrinogenの低下など凝固系の変化もある、尿酸やアンモニアは上昇する、血球系では白直球は増加するが.血小板はやや低下するか正常範囲のことが多い.AFLPで特徴的なのは血漿glucoseの低下である.
画像診断 一般的に大滴性の脂肪肝はCTや超音波診断により診断されることが多いが、本能では小滴性であり、画像診断される頻度は30~50%と少ない、
病理所見 確定診断は、病理所見による.肝生検では小集中心静脈周囲の肝細胞のぴまん性泡沫状脂肪化がみられる.ウイルス性の劇症.肝炎とは異なり、壊死や炎症像は軽微である.
3.治療
AFLPの病態はHELLP症候群と共通であるので、基本的には治療も表3に示したHELLPの治療に準ずる.しかし,症状は急速に悪化するので、AFLPの診断がついた場合には可及的早期に妊娠終了をはかる.通常、帝王切開府が選択されるが、重症の凝固障害を伴う場合は凝固因子の補充や輸血の準備を十分行ってから手術に臨む.そのほかに注意すべきことは、著しい低血糖を伴うことが多く,また、約60%には肝性コーマがみられ,約半数には凝固障害や重篤な腎機能障害がみられる.重症例では母体アシドーシスのため胎児死亡となる.回復期には.しばしば一過性の尿崩症や肝炎を伴うことがあり、腹水の貯留はほとんど全例にみられる.敗血症.出血、嚥下性肺炎.賢不全.膵炎、消化管出直などを合併した場合は、母体死亡をきたしやすいので注意する.
産後にHUS発症というのを一例だけ見たことがあります。
別に何もなかった人で、お産も普通にすんで。
貧血が異常にひどくて、いったいこれは?と思ったらこいつでした。幸い腎不全になることもなく、自然に治ったのですが。怖かったです。
投稿情報: 山口(産婦人科) | 2008年6 月 2日 (月) 07:58