(投稿:by 僻地の産科医)
亀田総合病院の「急性テオフィリン中毒症例」に関して、
オープンカンファレンス が開かれたということで、 ふたつの報告がありましたので、御紹介しますo(^-^)o!!!! これらの記事をみていると、
期待して報告を待っていましたが、
うーん。。。裁判もあてにならないし、
死因究明って本当に難しい
萎縮医療になるのは当然という気もします。
ひとつは、ロハスメディカルブログ!
亀田訴訟、国民は怒るべきだ
ロハス・メディカルブログ 2008年02月24日
http://lohasmedical.jp/blog/2008/02/post_1088.php
東大医科研で
亀田テオフィリン訴訟の事例を医学的に検討する
オープンカンファレンスが開かれたので傍聴してきた。
素人なりに非常に勉強になったのと もうひとつは、M3の橋本編集長のレポートですo(^-^)o!!! m3.com◆医療維新 民事裁判の高裁判決を検証するというオープンカンファレンスが2月24日、都内で開催された(経緯は、「判決を医師がレビューする画期的試み」を参照)。取り上げたのは、亀田総合病院(千葉県鴨川市)が2001年に経験した、急性テオフィリン中毒の喘息患者の症例だ。このカンファレンスの注目点・成果は三つある。 第一は、この裁判では、2006年9月の地裁判決、2007年12月の高裁判決ともに、医療側に過失があるとされて病院が敗訴したが、画像診断の専門家をはじめ様々な医師がこの判決に疑義を呈した点だ。同判決が確定した場合、萎縮医療を招くなど医療の現場にもたらす影響を懸念する声が上がった(現在、上告申請中)。 この日の演者は以下の通りだ。 血中テオフィリンは103.5μg/mLと高濃度に この日、症例を提示したのは、亀田総合病院の本島氏。本症例を担当した医師から相談を受けた立場にある(下記の「8時30分」の項を参照)。患者は気管支喘息の当時17歳の男子で、2001年1月1日に亀田総合病院の救急外来を嘔気・嘔吐を主訴として受診した。同院で治療中の患者で、その直前の12月29日に同院を退院したばかりだった。救急外来を受診した日の経過は以下の通りだ。 【2001年1月1日の経過】 4時10分 患者が救急外来受診(wall inにて)、採血・点滴 X線CT所見はアーチファクト、「カテで血管損傷」とは言えず 高裁判決の一番のポイントは、「カテーテル挿入時に血管を損傷したか否か」という点だ。判決では、「死因は、挿入時の血管損傷によって起きた出血性ショック」とされた。具体的には以下の通りだ。 【高裁判決の過失認定】 1)穿刺部位より約3cm頭側で静脈を損傷し、カテーテルが静脈外に留置されている可能性が高い。 【画像診断専門の高野医師の主な反論】 1)CT画像上、一見すると静脈外に留置されているように見えるが、これはアーチファクトで説明が付く。ここで言う「アーチファクト」とは、4列のマルチスライスCTの場合、カテーテルなど高信号のものが斜めにあると、位置ずれしてみえるということ。また、そもそも患者が不穏な状態で動いているときには、位置ずれが起こるため、正確な撮影はできない。 高野氏は、「このような場合、『カテーテルの位置は分からない』と解釈するのが妥当」と話し、「カテーテル挿入なしには、救急医療は実施できない。今回の判決が確定すると、安全にカテーテルを挿入したとしても、(訴訟対策として)血管撮影でその位置を記録しなければならなくなる」と救急医療への影響を懸念した。 さらに、高裁判決では、「血液凝固異常は,血液吸着療法の施行にあたっての抗凝固剤の使用が不適切であったため…」など、凝固異常に対するヘパリンの使用などについても問題視している。この点についても、弘前大の高見氏は、「血液吸着療法時に回路内凝血、採血時に注射器内凝固が見られたが、これは既に異常な凝固亢進状態にあったと見るべきであり、吸着療法が引き金ではない。極めて短時間に進行した、通常のDIC(播種性血管内凝固症候群)とは異なる状態であると言える。このような凝固異常の報告はなく、原因は不明」とした。そのほか、テオフィリン除去のための活性炭使用をはじめ、本症例に対する一連の救急対応には、織田氏をはじめ、各専門医はおおむね妥当であるとの見解を示した。では、この患者の死因は何か。一番、疑われるのは「急性テオフィリン中毒」だ(詳細は「「真相究明」は死因同定に限らず」、に続く)。 m3.com◆医療維新 オープンカンファレンスの第二のポイントである、「死因究明の難しさ」をめぐる議論を次に紹介する(カンファレンスの詳細は「「血管損傷」の鑑定結果に異議あり」、を参照)。 急性テオフィリン中毒はエビデンス不足で立証できず 救急外来で最初に検査した際の患者の血中テオフィリンは103.5μg/mLと、極めて高値だった。浜松医科大学の石崎氏は、テオフィリンの有効血中濃度は5〜20μg/mL であり、40〜60 mLでの死亡例もあるという論文を紹介した。高濃度のテオフィリン中毒では、様々な病態が起こり得るとし、死亡の危険が高まるとした上で、「普通の投与量で、103.5μg/mLにはなり得ない」と述べ、過剰摂取の可能性を指摘した。昭和大の鹿間氏も、急性テオフィリン中毒での死亡率の高さを例示し、「本症例は典型的な急性テオフィリン中毒であり、臨床像から極めて重篤である」と指摘した。 「分からない」ことが「分かった」ことが成果 オープンカンファレンスを傍聴していたある医師は、こう話す。「この裁判については、新聞報道を見ていただけなので、単に『カテーテルでの血管損傷による事故で死亡』だと思っていた。しかし、実際には、(損傷部位と思われる)CT所見はアーチファクトの可能性が高く、損傷したと仮定すると輸液が大量に入るわけもなく、説明が付かないことが多い。では、死因は何かということになるが、急性テオフィリン中毒の可能性が示唆されたものの、『専門家が議論しても、死因の同定はできない』ことが分かった。この結論が出たことが、一番の成果」。 高裁の判決文自体にも矛盾あり 最後に本カンファレンスの第三の点、今回の裁判の問題点・限界について触れる。まず挙げられるのは、高裁判決文自体の矛盾点だ。 また、今回の裁判では3人が鑑定を行ったが、いずれも同じ病院の医師だった。しかも、テオフィリン中毒に詳しい医師は入っていない。一審判決を出した千葉地裁では2001年12月から全国に先駆けて、複数人による鑑定制度を導入している。千葉県には大学付属病院が6施設あり、異なる施設から鑑定人を選択するのが一般的だった。さらに、亀田総合病院では、病理解剖を実施しており、「カテーテル挿入による血管損傷はなかった」との結論を得ている。しかし、それは裁判では採用されなかった。なお、患者の死亡時、警察に司法解剖を依頼したが、断られたという経緯がある。 裁判での議論の進め方、つまり医学的事実認定の司法的な事実認定の相違を指摘する声も上がった。「活性炭の使用から血液吸着療法に至るまでの医療行為の全体像に対する総括がない。カテーテルで血管を損傷したか否かという点だけを議論している。死因は、急性テオフィリン中毒しか考えられない。異常な血液凝固と出血傾向は、どうしても説明付かない」(武蔵野赤十字病院の須崎氏)。 法政大学大学院法務研究科教授で、弁護士の中村芳彦氏もフロアから発言し、「こうしたオープンカンファは、裁判官の前でやるべき。裁判ではまず『患者の死』という結果があり、その原因を探していく。急性テオフィリン中毒の臨床例がないから分からない、他に原因を求めないと収まりが悪い、結論が書けないという考え方で進められている。結果的に急性テオフィリン中毒でいったい何が起こるかはあまり議論されていない」と問題視した。 最後に、本裁判に対して多くの臨床医が抱くと思われる考えを紹介しておく。
こんな司法を放置していたら国民は大いに困ると思ったのと
司法内部では、どう考えるのか知りたいと思ったのと。
くだらない感想は置いて、報告を始める。(以下、ブログ参照を!)
2008年02月25日
オープンカンファレンス◆Vol.1
「血管損傷」の鑑定結果に異議あり
亀田総合病院の「急性テオフィリン中毒症例」の高裁判決を専門家が議論
橋本佳子(m3.com編集長)
http://www.m3.com/tools/IryoIshin/080225_1.html
また、この日のカンファレンスは、画像診断や救急医療、呼吸器疾患、病態解析、臨床薬理など様々な分野の専門医が実際の判決を医学的に検証するという画期的な試みだった。それでもなお、死因は推定されたものの、その確定までには至らなかった。それだけ診療関連死の死因究明は難しい作業であることが浮き彫りになったわけだが、多数の専門家によるディスカッションを経て、「どこまで医学的に説明が可能であり、どの部分はデータやエビデンスがなく説明が難しいのか」という点がカンファレンスの演者並びに傍聴者の共通認識となった。死因究明に至らなくても、この「納得感」が得られた意義は大きい。これが第二の成果だ。
第三は、高裁の判決文自体に矛盾点がある上、地裁・高裁判決が依拠した鑑定には問題があるなど、今回の裁判の問題点・限界が浮き彫りになった点だ。
【司会・演者】
司会:川添診療所(和歌山県白浜町)所長・聖マリアンナ医科大学客員教授 中川武正氏
症例提示:亀田総合病院免疫アレルギー科部長 本島新司氏
演者(発言順):
浜松医科大学臨床薬理学非常勤講師 石崎高志氏
千葉大学大学院医学研究院救急集中治療医学教授 織田成人氏
弘前大学大学院保健学研究科病態解析科学教授 高見秀樹氏
千葉県がんセンター画像診断部部長 高野英行氏
昭和大学横浜市北部病院呼吸器センター准教授 鹿間裕介氏
武蔵野赤十字病院救命救急センター長 須崎紳一郎氏
主催:東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム部門オープンカンファレンス事務局 上昌広氏
8時 血中テオフィリン:103.5μg/mL
8時30分 担当医が本島氏に電話、「つくば中毒センター」にも電話
9時20分 患者を病棟に移動、活性炭や胃洗浄によるテオフィリン除去を実施
14時23分 血液吸着療法を実施
16時ごろ 血中テオフィリン:62.88μg/mL
16時20分 全身性硬直痙攣発作→挿管
16時45分 血液透析用ダブルルーメンカテーテル挿入→血液凝固異常
17時 膀胱出血、ヘパリン5000U投与、心エコー実施
18時05分 X線CT撮影
18時40分 ヘモグロビン:6.4g/dL、輸血オーダー、ヘスパンダー、アルブミン
19時10分 血液型決まらず、ヘモグロビン:6.7g/dL
19時49分 ヘモグロビン:3.9g/dL
20時35分 ヘモグロビン:2.9g/dL、クロスマッチなしで輸血実施
20時40分 心停止
2)鼠径部に挿入されたカテーテルの先端が、その動脈血管を損傷した蓋然性が高い。
3)医師が患者の血管を損傷した過失と、同人の死亡との間には因果関係がある。
この根拠になったのが、X線CTの鑑定結果だ。しかし、千葉県がんセンターの高野氏は、主に次のような点から、この過失認定に疑問を呈した。
2)9L程度の輸液と輸血が行われており、もし後腹膜にカテーテル先が入っていれば後腹膜には大量の液体が貯留するはずだが、その所見は認めらない上、スムースに輸液ができたことも説明できない。
3)カテーテル挿入からの時間と、後腹膜への出血の経過は合わない(出血は、挿入から時間が経ってからのものと考えられる)。
千葉大の織田氏も、(1)カテーテルの穿刺部位とCT撮影での血腫部位の位置関係について合理的説明できず、(2)大量の輸液が問題なく入っている――ことなどから、カテーテル挿入時での血管損傷はないとした。
2008年02月25日
オープンカンファレンス◆Vol.2
「真相究明」は死因同定に限らず
医療者・患者の納得が真相究明の一形態になり得ることを示唆
橋本佳子(m3.com編集長)
http://www.m3.com/tools/IryoIshin/080225_2.html
「死亡原因は、控訴人病院医師によるカテーテル挿入時の血管損傷によって起きた出血性ショックであり、本件において、テオフィリン中毒がこれに影響を与えたことを認めるに足りる的確な証拠はない」
2007年12月の高裁判決では、患者の死因についてこう判断され、死因は「カテーテルでの血管損傷による出血性ショック」とされた。しかし、2月24日のオープンカンファレンスでは、「患者の死亡は、急性テオフィリン中毒ではないか」との意見が多数を占めた。
ただし、急性テオフィリン中毒の病態などに関する研究は少ない。そもそも症例が稀なことなどがその要因だと思われる。このため、高裁判決では、「テオフィリン中毒により、出血、血液凝固異常等を生じ、出血性ショックを発症し得るとの医学的知見が存在しない」などとされた。臨床上では、急性テオフィリン中毒、しかも高濃度の場合にその死亡例が多いことが分かっていても、本症例の死亡経過を説明できないことから、テオフィリン中毒と死亡との因果関係は認められないとされたわけだ。
東大医科研の上氏は、「『誰の過失か』の認定ではなく、真相を究明するための議論に徹したために、今日のカンファレンスでは様々な意見が出た。それでもなお、各分野の専門家がこれだけ議論を尽くしても、医学的に死因を究明することができない場合があり得るわけだ。真相を究明することがいかに難しいかが改めて浮き彫りになった」と語った。しかしながら、前述の医師のコメントの通り、議論の過程に納得すれば、それ自体が大きな成果と言える。これは実際の医療紛争における医療者と患者側の話し合いにも当てはまることであり、「真相究明の一形態になり得る」(上氏)。
例えば、
「抗凝固剤の使用方法を誤った過失があったということはできない」
「カテーテル挿入前に血液凝固異常が生じたのは,血液吸着療法の施行にあたっての抗凝固剤の使用が不適切であったため…」
といった事実認定が食い違う記載が見られる。
「患者は嘔気・嘔吐で救急外来に来院した。この当直医は、たまたまこの患者が喘息であることを知っていたので、テオフィリン濃度を測定したため、テオフィリン中毒が判明した。しかし、この時期(1月1日)なので、他の医師であれば、ノロウイルスやロタウイルスによる消化器感染症を恐らく考えたことだろう。判決のように、カテーテルによる血管損傷が死亡につながったとするなら、テオフィリン中毒の診断をつけずにそのまま帰宅させれば、患者は死亡しなかったというのだろうか」(本島氏)。
裁判における鑑定書を出した医師が分かるなら、オープンカンファレンスに参加してもらったらいいように思いますが、出たがらないでしょうね。
投稿情報: hanamegane | 2008年2 月26日 (火) 18:35