(関連目次)→地方に病院はどうしても必要?
(投稿:by 僻地の産科医)
日本医事新報から、ステキな文献持ってきましたo(^-^)o!!!!
我々は僻地にどうしても行かなくてはならないのか?
きっちり数字を出していただけるとありがたいです(>▽<)!!!!
だって転勤してみた方が、ずっとずっと忙しいんだもん!
では。どうぞ ..。*♡
県庁所在地への小児科医の集中は
小児人口の集中と強い相関を示す
(日本医事新報 No.4353(2007年9月29日)p77-79)
http://pediatrics.news.coocan.jp/my_paper/sinpo2007_4353_77.pdf
江原 朗
厚生労働省の「医師の需要に関する検討会」は、医師不足の原因を医師の偏在に求めている1)。また、県庁所在地などの都市部に医師が集中したため、地域医療が成立しなくなっているとの報道もみられる2)。
そこで、各都道府県の小児科医(主たる診療科が小児科である医師)が、県庁所在地にどの程度集中しているか計算し、小児人口の県庁所在地への集中度と比較してみた。
1 20の府県では、県庁所在地に小児科医の4割以上が集中
平成16年の医師歯科医師薬剤師調査3)によると、岩手、宮城、秋田、山形、神奈川、愛知、富山、石川、福井、京都、和歌山、岡山、広島、徳島、高知、大分、佐賀、長崎、熊本、鹿児島の20府県で、県庁所在地に勤務する小児科医の割合が県全体の4割を超えている(図1)。
2 県庁所在地への小児科医の集中と小児人口の集中との間には強い相関
平成17年の国勢調査4)から、各都道府県の小児人口(15歳未満)が、どの程度県庁所在地に集中しているか計算し、小児科医の県庁所在地への集中度との相関を求めた(図2)。
県庁所在地への小児人口の集中度と小児科医師の集中度の間には強い相関(相関係数0・772)をみとめた。
また、回帰直線の式は、(小児科医の集中度〔%〕)=8・6%+1・03×(小児人口の集中度〔%〕)で表された。
3 小児科医が県庁所在地に集中するのは、小児人口が集中しているため
図2の通り、県庁所在地への小児人口の集中度と小児科医の集中度との間には強い相関が認められる。
したがって、都市部に医師が偏在するのは、地方での生活を嫌うためではなく、都市部に受診者(市場)が存在するためであると考えられる。医師が地方の生活を嫌っているとの報道も散見されるが、当を得ているとはいえない。
もちろん、県庁所在地への小児科医の集中度は、小児人口の集中度よりも10%弱低い。これは、都市部の病院で研修したり、大学院生として研究する医師がいるためであろう。
しかし、これだけで「医師は都会での生活を好み、地方を嫌がる」と決めつけることはできないと思われる。
人口の少ない地域で医師の配置を検討する場合、医師を雇用する原資をどこから得るかが問題になる。現時点では、診療報酬は受診した患者数に大きく依存する。
小児科は、高額な検査や処置が他科に比べて少ないため、医師誘発需要が生じる可能性は低い。したがって、受診者数が少なければ、小児科の収益は減少せざるを得ない。
二次医療圏の解析では、約1万人の人口(全年齢層)の増加に対して1人の小児科医が増えるに過ぎないと報告されている5)。人口の少ない地域では、特別の補助金等の手当てをしない限り、十分な小児科医を雇用できる原資を得られないだろう。
24時間体制の小児科診療を行うには、最低でも7〜8人の小児科医が必要である6)。しかし、すべての二次医療圏で小児科医の数が10名以上(勤務医・開業医の計)である府県は、栃木、茨城、岐阜、大阪、兵庫、鳥取、愛媛の7府県だけである。その他の都道府県には、二次医療圏に10人未満の小児科医しかいない地域が存在する。
こうした地域では、いつ、どこで小児救急医療体制の不備や医師不足が社会問題化しても不思議ではない。事実、読売新聞記事情報データベースを用いて、「医師不足AND小児科」の条件で検索する(昭和61年9月〜平成19年8月21日)と、各地域の小児科の医師不足に関する報道がいかに多いかがわかる(表1)。
都市部とへき地との間に医師の偏在の問題があることは確かである。しかし、医師が地方での勤務を嫌って赴任しないというわけではなく、小児人口が少ないために地方では十分な小児科医の雇用が成立しないことが問題なのである。さらに、地方ではその結果として少数の医師に過重労働を強いることになるために、地域医療の崩壊が加速されていることが問題なのである。
それでは、地方の医療基盤の崩壊に対してどう対処したらよいのだろうか。医療施設を集約化して受診体制を広域化する以外にない。受診距離の延長は、交通網の整備で補えばよい。教育の現場では、人口の減少に対応した学校の統廃合が既に行われている。
医師の充足率が低い北海道東北地区7)においても、各二次医療圏の中心都市(小児科医が最も多い市町村)から50㎞以上離れた市町村に居住する小児人口は、最大でも5・2%に過ぎない(表2)。
したがって、こうした遠隔地の小児は総合医や小児科医以外の医師がスクリーニングを行い、必要に応じて基幹病院に搬送する体制が確立すれば、遠隔地の小児の健康は守られると考えられる。
都市部に医師が集中するのはそこに市場が存在するからである。したがって、統制経済を施行する以外に、彼らを強権で地方に追いやることは不可能である。
むしろ、地方の小児が受診する機会を奪われないよう、交通網の整備を図ること、集約化により、拠点となる医療施設の診療体制を確保することが必要である。
1)厚生労働省:医師の需給に関する検討会報告書,平成18年7月.http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/07/s0728-9.html
2)共同通信,首相「安心の基盤を」医師不足で初会合,2007年05月18日.http://www.47news.jp/CN/200705/CN2007051801000237.html
3)厚生労働省:医師歯科医師薬剤師調査 平成16年.第5表 医療施設従事医師数,診療科名(主たる)・従業地による二次医療圏・市区町村別.http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/data/180/2004/toukeihyou/0005182/t0112187/E50001_001.html から http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/data/
180/2004/toukeihyou/0005030/t0110401/E50047_001.html
4)総務省統計局:平成17年国勢調査.都道府県・市区町村別統計表(一覧表).http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2005/ichiran/zuhyou/001.xls
5)堀田哲夫:小児科 46:445,2005.
6)江原 朗:小児科 48:363,2007.
7)厚生労働省医政局指導課:医療法第25条に基づく立入検査結果(平成16年度)について.http://www.wam.go.jp/wamappl/bb13GS40.nsf/0/ 77133c4b82539af6492570f9001eaf29/$FILE/H16nendo.pdf
pdfを
http://pediatrics.news.coocan.jp/my_paper/sinpo2007_4353_77.pdf
においています。
投稿情報: 江原朗 | 2007年11 月11日 (日) 22:24
ありがとうございます!
付け加えさせていただきましたo(^-^)o..。*♡
投稿情報: 僻地の産科医 | 2007年11 月12日 (月) 23:09