(関連目次)→今月の産婦人科医報..。*♡
今月の産科医会報からおもしろいところを!
そういえば勤務医部会からは、また調査など載っていましたし、
福島県立医大佐藤先生から、大野事件のその後というような記事もありました。
ぜひぜひ明日お伝えします。
ではどうぞ!まずまず、医事紛争シリーズから!
なお、一審の判決文はこれのようだという情報提供がありました!
東京地裁平成15年(ワ)第6022号 平成17年9月30日判決
>http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/DC89CD464A3AD6814925709D002BC392.pdf
1審無責、2審有責となった産後出血性ショックの事例(T高裁 H19/3/27)
羊水塞栓症のため無責との判断を下した1審判決(平成17年9月)を棄却し、過失を認め有責とした2審判決一なぜ判決が覆ったか。
〔事例〕
当事者Aは28歳初産婦。平成14年8月22日陣痛発来にて被告B病院に入院し、
同日22:18 吸引分娩にて女児を分娩
22:33 胎盤娩出。メテナリン静注後子宮収縮良好となり、出血少量となる。
22:45、軽度悪寒・両鼠径部痛を訴え、
22:55 軽度顔色不良となり、意識はあるものの血圧70/50、心拍が微弱となる。
23:03 血圧103/32.
23:15 縫合終了、子宮底マッサージ後に出血は再び少量となる。応援医師により腹部エコーを行い、胎盤鉗子にて子宮内容を除去
23:20 点滴を追加増量するも血圧が上昇しないため
23:35 エフェドリン投与。この時点のSp02は98%であったが
23:30 にはショック指数が1.5を超え、出血性ショック状態であった(推定出血量1,820g)。
23:38の腹部エコーでは子宮内遺残や腹腔内出血は否定的であった。
翌23日0:06顔色不良蒼白となり胸痛を訴え、
O:12意識混濁
O:19挿管するもSp02が46%と低下したため
0:37救急車にてC病院救急救命センターへ搬送。救命措置を行ったが、翌24日Aは急性呼吸循環不全にて死亡した。
〔争点〕
①出血性ショックを看過し、適切な輸液および輸血を怠った過失、
②高次医療機関への搬送が遅れた過失。
〔1審判決の要旨〕
①B病院での輸液量は1,030mlであり、出血量に対しては少なかったが、必ずしも過失があったとまではいえない。輸血に関しても23:06の時点でHb9.7g/dLであったうえ、23:15には出血はほぼ止まっていたため、輸血を実施する義務があったとはいえない。
②自施設で対処不可能な場合は高次医療機関へ搬送する必要があると認められるが、本件においては遅くとも23:15には出血はほぼ止まっていたため、急変以前に搬送の義務があったとはいえない。
③B病院における出血の原因は、基本的には癒着胎盤の剥離とその後の弛緩出血と考えられ、23:38頃までには出血性ショックが生じていたと疑われる。
しかし、その後の胸痛、意識混濁、血圧および心拍数低下などの所見、およびC病院搬送後2時問で採取された亜鉛コプロポルフィリン(Zn-CP1)が63pmo1/mlと非常に高値を示していることから羊水塞栓症の発症を疑わせるものであるとして、請求を棄却した。
〔2審判決の要旨〕
1審判決を取り消す。Aは22:55には出血性ショックを呈していたため、適切な輸液および輸血を怠った過失、高次医療機関への搬送が遅れた過失が認められる。Zn-CP1高値だからといって羊水塞栓症を確定する証拠はない。合計7,780万円支払え。
〔解説〕
本件では確かに輸液量不足は指摘されるが、この出血量は死亡する程の量ではない。出血量に見合わない臨床症状の悪化が見られ、Zn-CP1高値と併せ羊水塞栓症の発症が強く疑われる。しかし、原判決が取り消されたのは、2審では最初から有責の結論ありきの姿勢が強く「患者救済型」の裁判になったことが大きい。上告はしていない。ともあれ、今後患者が死亡した場合は、「患者救済型」判決もあり得るので、分娩後の出血に対しては、適切な血液検査および早めの輸液・輸血は当然ながら、常に母体搬送を念頭においた慎重な対処が望まれる。
支部からの声 日本プレスセンター 19・7・11 医会の行っている偶発事例調査、医療事故対策と医療安全に関する会員への指導について、医会の取り組みについて説明した。平成16年4月より全国規模で開始し、約半数の産婦人科医療施設から情報を収集している。調査分析結果は各支部に報告し、再発防止に努めている。具体的には4,625医療機関のうち、2,819医療機関から回答、298例の偶発事例の報告があった。 あとは投稿特集ですo(^-^)o ..。*♡ 新執行部に望むこと(1) 周産期医療の崩壊を少しでも食い止めるためには、一般の人々の分娩に対する誤った安全神話を崩し、「お産は命がけ・分娩が終了するまでいつ状態が急変するか分からない」という考え方を浸透させる必要があります。そして、患者と医師、コメディカルが安全なお産という共通の目標を目指して、皆で努力して初めて元気な赤ちゃんが生まれることを理解してもらうことです。新執行部には専門の職能集団として、広く」般国民や社会に対して早急にこのことに関しての広報活動を行っていただきたいと思います。 また、他にも医会としての考え方を広く社会に広めるために、メデイアなどを使って、積極的に情報を発信することをお願いいたします。もう1つの要望は、福島県立大野病院の件や堀病院の保助看法違反の件など、産婦人科に関して問題となる事件が起きた時に、産婦人科医会としてのコメントを迅速にかつ簡潔、的確に出してほしいということです。情報杜会の現代では、事件が報道された直後からインターネットなどで色々な情報が飛び交っています。何か起こった場合にできるだけ早期に医会として一般社会に向けてのコメントを出すことが必要であると思います。情報収集に時間が掛かるのかもしれませんが、迅速な対応こそが求められていますので、ぜひ、この件に対し対策部をつくるなど、システムの構築をお願いします。 「懐胎時期に関する証明書」 一懐胎時期が違っていた場合一
【富山県支部会員平成18年4月1日現在】
総数:117名、70歳以上:26名(22.2%)、55~69歳:23名(19.7%)、40~54歳:38名(32.5%)、39歳以下:30名(25.6%)
私的産婦人科医療施設数:42施設(うち分娩取り扱い:13)
公的産婦人科医療施設数:16施設(うち分娩取り扱い:13)
「脳性麻痺と無過失補償制度」「医会の自浄作用」を解説第2回記者懇談会
出席者:寺尾会長、木下・小林両副会長、石渡・宮崎両常
務理事、西井幹事長、塚原副幹事長、栗林幹事
出席記者15名
無過失補償制度は、
①脳性麻庫児および家族を速やかに救済すること。
②訴訟の抑止力になる可能一性があること。そのことで、産婦人科を志望する若手医師の増加を期待できる。
③脳性麻痒の収集分析が可能になり発生予防につながることなどにより、安全で安心な周産期医療構築に役立つ。この制度は、医師に対しての救済ではないこと、脳性麻庫の発症が既に妊娠中の胎内で起こっていること、分娩時の発症は全脳性麻庫児の15%程度に過ぎないことなどを解説した。
分娩に伴う偶発事例が55%、妊産婦死亡15例、新生児・胎児死亡は35例であった。脳性麻庫児事例18例、そのほとんどが紛争になっていた。
記者の中には、自浄作用を求めている自分たちよりも、医会の方が真剣に取り組んでいるなどの発言もあった。
積極的な情報発信を 山梨県 Y先生
新執行部に望むことは、「一般の人々や社会に対する対外的な広報活動の充実」と「迅速で的確なコメントの発表」です。
周産期医療は崩壊の一途を辿っています。産婦人科医の減少や分娩施設の減少は日本全国で起こっており、特に地方においては甚だしく、お産難民が出ることは必至の状況です。何故そうなったのでしょうか?産科医は分娩を安全に、確実に遂行することを使命として、日々寸暇を問わず分娩業務を行ってきました。その努力の結果として、世界」低い周産期死亡率や母体死亡率を築き上げてきたことは周知の事実です。それでも周産期死亡や母体死亡をゼロにはできないものなのです。残念ながら患者やその家族、一般の人々は分娩の安全性に対して勘違いをして、正常に生まれてあたりまえで、分娩に際して、児や母体に異常があったらすべて産科医の責任であるかのような態度に出るのです。一生懸命努力していることには感謝もせず、結果が悪ければ即訴訟ということになります。このようなことが起これば産科医はやる気を無くし、分娩からの撤退を考えることはやむを得ないことであると思います。
先の6月に開かれた第1回都道府県医師会長協議会で、婚姻の解消または取り消し後、300日以内に生まれた子に対する医師の「懐胎時期に関する証明書」について、懐胎時期が違っていた場合、罪に問われたり、裁判所に召喚されることはないかとの質問があった。
これに対し、日本医師会の今村常任理事は、
①刑法160条の虚偽診断書作成罪および同法157条の公正証書原本等不実記載罪は故意犯の規定である
②医師が相当な医学的根拠を持って懐胎時期を推定する限り、故意がないのが通常であるため、両罪に間われることはないと説明した。
また、嫡出否認や親子関係不存在の訴えにおいて、生物学的親子関係の有無はDNA鑑定で明確となるため、証明書を作成した医師が改めて裁判所へ召喚される可能性はほとんどないとした。
さらに、医師が証明したのは懐胎時期であり、親子関係ではないため、明らかに問違った診断をしない限り、生物学的な父子関係が否定されたとしても、損害賠償を請求されることはほとんどないとした。
出血性ショックの訴訟の記事を読んで思うのですが、
「お金じゃない。真実を知りたい」と言って訴訟を起こす原告と、
医学的妥当性よりも患者救済を優先する司法の間の矛盾。
しかし、それでも原告は納得をするという現実。
なんだか、むなしくなりますね。
投稿情報: y-gami | 2007年8 月16日 (木) 19:10
そのように整理されると、ますます虚しくなりますねo(^-^)o..。*♡
投稿情報: 僻地の産科医 | 2007年8 月16日 (木) 21:15
「分娩後の出血に対しては、適切な血液検査および早めの輸液・輸血は当然ながら、常に母体搬送を念頭においた慎重な対処が望まれる。」
何の対策にもなってないですね。
今は寺尾先生とかが頑張っておられますが、
「もうだめです。みな廃業しましょう」と医会が玉音放送する日がきたりするかもしれませんね。
投稿情報: たまたま酸化医 | 2007年8 月19日 (日) 10:37
> たまたま酸化医先生
うっ(>_<)!!!!!
シャレになりません(涙)。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2007年8 月19日 (日) 11:21