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癒着胎盤など産後出血で子宮摘出がいかに困難かという文献紹介o(^-^)o
大変なんですよ~。。子宮は浮腫浮腫でびよよ~んってなってるし。
大抵の母体はそのとき、本当に今にも亡くなりそうですし。。。
手はがくがく、足はぶるぶる、でも他に誰も何もしてくれないし、自分しかやれる人がいない。。。となると、もう泣きそう!
(子宮摘出症例の母体死亡率を誰か調べてほしいものです(涙)。)
では、どうぞ!!(専門の方もできれば読んでください。特に若年者の方々!)
産褥と子宮摘出術
高橋恒男 春木篤
(産婦人科治療 vol.88 No.4 2004-4 p976-980)
産褥における子宮摘出術は,ほかの方法では止血困難な産科出血の場合などに絶対必要な手術手技で,産科医が必ずマスターしておかなければならない.近年,前置胎盤で既往帝王切開創に癒着胎盤となる症例が増えてきている.手術では,血管が怒張しており損傷しやすく出血量も多く,組織はもろく浮腫状になっており,丁寧に縫合・結紮をしないと組織を損傷したり,結紮の緩みで再出血をきたしたり血腫を形成したりしやすい。
はじめに
分娩に関係して行われる子宮摘出術は,主に経膣分娩後の産褥に行われる場合と帝王切開に引き続き行われる場合があり,本稿では両者について解説する.産褥における子宮摘出術は,ほかの方法では止血困難な産科出血の場合などに絶対必要な手術手技で,産科医が必ずマスターしておかなければならないものである.またこのような場合は,救命のための緊急手術の場合が多く出血量も増すため,一般の子宮摘出術より困難な場合が多い.産科医は日頃より,予定された子宮摘出術で訓練を積んでおく必要がある.
手術適応
産褥における子宮摘出術の適応を表1に示す.近年,内腸骨動脈や子宮動脈の塞栓術などの治療法の進歩により,子宮摘出術をせずに子宮を温存できる方法が普及し,以前より子宮摘出術の適応は少なくなってきたように見えるが,一方,帝王切開率の上昇にともない,前置胎盤で既往帝王切開創に嵌入胎盤(placenta increta)あるいは穿通胎盤(placenta percreta)となる症例が増えてきており,手術の重要性は減っていない.
産褥の緊急子宮摘出術で最も多い適応は,弛緩出血であり,次が子宮破裂であり,3番目に多い適応が癒着胎盤である.
産褥期に非緊急の子宮摘出術をするかどうかは意見の分かれるところである.一般的には,良性疾患での適応は子宮筋腫であり,ほとんどの場合は悪性疾患が適応となる.また帝王切開が選択された場合には,子宮内膜症などが適応となることもある.
産褥子宮摘出術の特徴
産褥期における子宮摘出術の特徴を表2に示した.血管は怒張しており,損傷しやすく出血量も多くなる.組織はもろく浮腫状になっており,丁箪に縫合・結紮をしないと組織を損傷したり、結紮の緩みで再出血をきたしたり血腫を形成したりしやすい.とくに基靭帯,膣断端,卵巣固有靭帯の縫合・結紮は注意深く行い,手術終了時にも丁寧に止血状態を確認する必要がある.
手術手技
1.経膣分娩後子宮摘出術
膣からの出血が多い場合,腹部にのみ集中していると術布で覆われているため性器出血量に気づかず,正しい出血量と全身状態が把握できていないことがよく起こるので注意が必要である.
一般的には救命のための緊急手術として行われることが多く,子宮も大きいため,安全な手術のために視野の確保のよい下腹部正中切開を行う.これのみでは十分な視野が得られない場合は臍側方から臍上方まで切開を延長する.(略)
産褥の子宮摘出術では出血量も多く,出血傾向をみることが多く,後腹膜腔からの微細な出血を含め術後出血や血腫形成のリスクが高く存在する.
このため筆者らは,後腹膜の縫合は行わず,開放にしたままダグラス窩に直径5mm以上のドレーンを設置する方法を原則としている.
2.帝王切開後子宮摘出術
帝王切開に引き続き子宮摘出術が予想される場合は,帝王切開の方法として子宮体部縦切開(古典的帝王切開)を選択したほうが,子宮摘出術がより安全で容易となる.帝王切開の終了後,止血のため子宮切開創を大きく縫合し,前述の子宮摘出術の操作に入る.
3.既往帝王切開創部癒着胎盤症例
近年,帝王切開率の上昇にともない前置胎盤の症例が増加しており,これらの症例で胎盤が嵌入胎盤や穿通胎盤となる症例が増加している.アメリカ産婦人科学会(ACOG)でも,2002年の1月にCommittee Opinionで,「癒着胎盤の頻度が過去50年で10倍になり,2回以上の帝王切開既往妊婦の前置胎盤例では40%近くが癒着胎盤となる.癒着胎盤が疑われる妊婦には子宮摘出術と輸血の可能性を告げておくべきである.」と警告を発している1〕.
このような症例の開腹所見は図5のように特徴的である.子宮下部は胎盤付着部位が腫大膨隆し,暗紫色に胎盤が透視できる場合がある.子宮下部・膀胱上腹膜には怒張した血管が多く見られる.
このような場合,腹壁切開は上腹部まで延ばし視野を広くとり,胎盤から十分な距離をおき子宮体部縦切開(古典的帝王切開)を行う.胎盤の剥離は決して試みず,子宮創部を仮縫合止血して子宮摘出術に移る.膀胱の剥離は,既往帝王切開創部への癒着と膀胱壁直下までの胎盤の浸潤のため非常に危険で困難である.癒着部分は膀胱損傷をおこしやすいので無理な鈍的剥離をすることなく先の細いケリー鉗子などで少しずつ癒着部分の膀胱組織を持ち上げ切断していく.上部の癒着部分の剥離がある程度すすむと,多くの場合は癒着が少なく普通に鈍的に剥離できる部分となる.子宮動静脈・基靭帯上部の切断を行い,子宮下部から頸部の支持組織を切断する過程が本手術で最も出血が多くなる.胎盤は子宮筋表面まで浸潤してきており,この基靭帯処理の過程で胎盤が切開部分より飛び出してきて大量の出血をきたす.また胎盤は子宮下部に付着したままであるので膨隆した状態で骨盤壁との間に余裕がなく,通常の操作よりかなり困難である.出血を少なくするためにはこの間の操作を手早くすることが大切である.このためには尿管を手探りで確認できるようにしておくため前もって尿管ステントを入れておくとよい.術前に尿管ステントが入れられなかった場合は,膀胱剥離の前に膀胱を切開し,ステントを入れる.膀胱切開を行うと,癒着がひどく膀胱の上端の癒着部分が同定できない場合でも膀胱粘膜面より膀胱の境界が確認でき,また膀胱までの穿通胎盤の場合も,膀胱の全体の状態を確認でき,むしろ膀胱の損傷・欠損を最小限にとどめられることができ,試みて良い方法である.子宮摘出後は膀胱の縫合は通常通り行い,膀胱上にもドレーンを設置し,術後バルーンを10日以上留置しておく。
あの「奥田先生」勤務される某周産期センターの御大ですね。
投稿情報: 匿名希望 | 2007年7 月23日 (月) 17:54
あ、横浜の(>▽<)!!!!
あの奥田先生の上司ですね!!!!
投稿情報: 僻地の産科医 | 2007年7 月23日 (月) 22:49
今みたら、奥田先生は、センター病院の周産期センターにはお名前がなくて、大学病院の方に移られたようです。横浜市大は、付属病院が二つあるのです。
「総合周産期母子医療センター」とあって産婦人科医が11人いる!
投稿情報: 匿名希望 | 2007年7 月26日 (木) 18:22