(関連文献→) 子宮頸癌 目次
子宮頸部異形成(CIN)のある方から質問がありましたのでo(^-^)o ..。*♡
蒸散方と円錐切除のどちらがいいですか?というような質問でしたので、
私は円錐切除(LEEP)かなと思いますけれど。ではどうぞ!
子宮頸癌発生予防のためのCIN治療
平井康夫
(産科と婦人科 vol.73 No.2 2006-2 p213-216)
要旨
子宮頸癌は,他の多くの癌とは異なり,予防が可能であることが多い.子宮頸癌発生に至るまで,前癌病変から子宮頸癌への進行が多くの場合,とても遅いため,前癌病変を検出してから治療し,浸潤癌への進行を防ぐ機会が10年以上存在すると思われるからである.検診のなかで,どの段階の病変を治療対象にするかは,患者の希望やどの治療法を選択するかにかかっている.世界的にもっとも普及しているのは,凍結療法である.一方,病理診断のための組織を摘出できる点で,LEEP法はとくにすぐれている.子宮頸部前癌病変の性質と治療手段を考慮した,公的検診システムに基づく適切な子宮頸部腫瘍の治療プログラムが必要である.
はじめに
子宮頸癌は予防が可能であることが多い点で,他の多くの癌とは異なる.子宮頸癌は,発生に至るまで前癌病変から子宮頸癌への進行が,多くの場合とても遅いため,前癌病変を検出してから治療し,浸潤癌への進行を防ぐ機会が10年以上存在するからである.現在,わが国で行われている前癌病変に対する種々の検査法と予防的治療法について概括し,それぞれ利点と欠点について考察する.検査法にかかわらず,受診率を拡大することは現状においてはもっとも重要である.検診のなかで,どの段階の病変を治療対象にするかは,患者の希望やどの治療法を選択するかによる.すべてのレベルの医療機関において実施可能であり,かつ安全性が高いとの理由で世界的にもっとも普及しているのは,凍結療法である.一方,病理診断のための組織を摘出できる点では,LEEP法がすぐれている.
子宮頸癌の目然史(原因から発症まで)
子宮頸癌の発生メカニズムに関する知識は,子宮頸癌発生を予防するための効果的指針を作成するために必須である.子宮頸癌発生の99%以上と,前癌病変の多くは,HPV感染が関与している1).
HPVは性行為によって感染する(Sexually Transmitted Infection;STI)が,そのほとんどが無症候である.HPVはもっともありふれたSTIであり,性交渉を持つ女性の50~80%が一度は感染するとさえいわれる2)3).女性の多くは10代,20代または30代でHPVに感染する.したがって,子宮頸癌はありふれたSTIによる,ごくまれな合併症ということもできる.
現在,HPVは100タイプ以上に分類され,そのうち30タイプ以上が生殖器に感染する.この中で,高リスクHPVだけが子宮頸部への感染により,頸部上皮細胞の異形成を引き起こし,その治療を行わなかった場合,子宮頸癌に進行することがあると理解されている.多くのHPV感染は一過性であるが,身体の免疫機構その他によって排除できない場合,HPV感染は癌へ進行する危険性が否定できない.いくつかの調査から,高リスクHPV感染女性のおよそ10~20%が持続感染を起こし,これらの女性では高度異形成以上の前癌病変に進行するリスクが高く,さらに,その前癌病変を治療しなかった場合には子宮頸癌に進行するリスクが高いことが明らかになっている4/6〕.
一方で,癌への進行に関与する環境因子や免疫要因は十分には明らかになってはおらず,これらの因子から前癌病変が子宮頸癌へ進行するか否かについて予測することはできない.HPV感染によって引き起こされた異形成の多くは,高度異形成や子宮頸癌へは進行しないまま自然に治癒するが,一部は持続感染を生じて約10年までの期間をかけて浸潤癌に進行する可能性がある.この期間は,子宮頸癌になる前に発見し,治療することが可能な期間でもある.
HPV感染防御による子宮頸癌の一次予防
HPV感染は子宮頸癌の原因として必須であることから,感染防御による一次予防の可能性が注目されてきた.パートナー数を減らすことやコンドーム等避妊具を使用することで感染の機会を減少させることに重点を置いた一次予防の努力もはらわれてきた.しかし,限られたデータではあるが,これらの効果はごく少なく,とくに避妊具の使用とHPV感染減少の関連性は低いことが示された7).おそらく,男女ともHPVに感染した場合,ウイルスは生殖器の内部および周囲に広く存在しており,コンドームで防げない部位があるためと考えられた.しかも,感染の自覚のないまま長期間HPVが潜伏感染することがあるため,初婚の夫婦であってもパートナーのずっと前の性交渉によって感染する可能性もある.
子宮頸癌のもっとも有望な一次予防法は,効果的なHPVワクチンの開発と大量生産によるものである.HPV16および18(子宮頸癌の原因のおよそ70%とされる)に対する予防ワクチンが2010年までに途上国で販売されることが計画されている.初期のデータではあるが,これらのワクチンは特定のタイプのHPV感染および前癌病変を防ぐことが示唆された.ワクチン実用化後長期の追跡データによって,子宮頸癌発生率に対する効果が示されるであろう8).ただし,すでにHPV感染している多くの女性や,16,18型以外のHPV感染の女性にとっては,これらの予防ワクチンが使用可能となっても検診と治療のブログラムを持続することが重要である.
子宮頸癌予防手段としての前癌病変の治療
HPV感染によって引き起こされた異形成の一部は持続感染を生じ,その後約10年までの期間をかけて浸潤癌に進行する可能性がある.この期間は,子宮頸癌になる前に発見し,治療することが可能な期間でもある.子宮頸癌が他の癌腫以上に予防可能な理由が,ここにある.HPV感染によって引き起こされた前癌病変である異形成(CIN I/II)に対する治療として従来は,局所麻酔下のコールドナイフ円錐切除術や子宮摘出術が考慮された.最近では,凍結療法とLEEP法が安全かつ効果的である点,また,比較的簡単で経済効率がよく,外来での対応も可能である点で,世界的には選択されることが多くなっている.LEEP法は,組織を摘出することを主目的に施行できる.病理学的に診断可能な組織検体が提供可能で,断端部の評価によって,残存病巣の有無も推定できる.一方,凍結療法は組織を凍結破壊する方法であるため,組織検体は採取できない(表1参照).
1.凍結療法
凍結療法は子宮頸部をCO2やN20などの液体冷却剤で凍結することにより,子宮頸部前癌病巣を破壊する.凍結プローブで病変を完全に覆うように子宮頸部に接触させることで,凍結プローブの外側に4~5mmの凍結層が形成される.凍結時間は,3分間を1回に行う方法と,3分間を2回計6分間行うやり方がある.凍結療法による合併症は少ない.また,その効果として,86~95%で前癌病変が消失すると報告されている(表1参照).
凍結療法の欠点は,組織を直接破壊するため,残存病変の有無や浸潤病変が潜在していないかどうかなどをすぐには判定できないことである.
2.Loop式電気メスによる摘出法(LEEP法)
LEEP法は,ループ状の細い電気伝導性ワイヤーを用いて,子宮頸部の前癌病変領域を取り去る治療である.通常,本法は部分麻酔下でコルポスコピー補助のもとに行う.副障害として術中,術後の大量出血が1~4%の患者で起きることが報告されている9〕.
LEEP法の効果として,91~98%で前癌病変が消失すると報告されている(表1参照).LEEP法は簡便な外科手術であるが,病理診断のための組織を摘出できるので,組織診断によって病変の残存の有無や潜在する浸潤の有無を検出することが可能である点がとくにすぐれている.
おわりに
子宮頸癌は検診で前癌病変を検出し,癌に進行する前に適切な治療を行うことによって予防が可能である.子宮頸部前癌病変の性質と治療手段を考慮した,公的検診システムに基づく適切な子宮頸部腫瘍の治療プログラムが必要である.図1に2004年WH0が推奨する子宮頸癌予防プログラムを一部改変して示した.検診によって前癌病変があると判断された女性が,治療を受け,癌への進行を防げるよう検診と治療をどのように結びつけるかが今後の課題である.
実は明日、クラス3bの患者の子宮全摘をやります。
といっても、実は大腸がんの手術があるんで、そのついでにということなんですけど。
本人も「どうせ腹を切るのなら、あとくされのないようどーんとやっちゃって」ということで、まあ通常の単純子宮全摘術で行きます。
投稿情報: millionriver | 2007年7 月24日 (火) 22:34