Medical Tribune 2007年4月19日号シリーズいきます..。*♡
分娩誘発で羊水塞栓リスクが2倍に
絶対リスク増加はきわめて低い
Medical Tribune 2007年4月19日号 p32
[ニューヨーク]マグギル大学(カナダ・モントリオール)のMichaelS.Kramer博士らは,カナダにおける300万例の院内分娩コホートを検討した後ろ向き住民村象コホート研究により羊水塞栓に関連する因子を評価し,「分娩誘発は羊水塞栓の総症例リスクをほぼ2倍にする」との結論をLancet(2006;368:1444-1448)に発表した。調整ずみオッズ比(AOR)は1.8であった。同博士らは「絶対リスク増加は低いとはいえ,妊婦と医師は非緊急の分娩誘発を決定する際には,このリスグを考慮すべきである」と推奨している。
死亡は10万例当たリ1~2例
リスク増加に関連する他の因子は母体年齢35歳以上(AOR1.9),頭位帝王切開(同12.5),非頭位帝王切開(同8.6),頭位経膣鉗子分娩(同5.9),頭位経膣吸引分娩(同2.9),羊水過多(同0.O),頸部裂傷または子宮破裂(同3.8),前置胎盤または胎盤早期剥離(同0.5),子癇(同11.5),胎児仮死(同1.7)である。一方,母親が若いことは強力な保護因子であり(同O.2),難産も低リスクに関連していた(同O.6)。
Kramer博士らは「これらの危険因子(分娩の年度も含め)を調整後も,医学的分娩誘発は羊水塞栓リスクの2倍弱の増加と関連している」と述べている。同博士らは「分娩誘発を受ける妊婦の羊水塞栓リスク増加の絶対値はきわめて小さく,妊婦10万例当たりの総症例数は4~5例,死亡症例数は1~2例であることは強調すべきである」と指摘。それでも,「米国のように分娩誘発の比率が20%に達し,医学的分娩誘発が一定数の死亡を引き起こしているような国ではこの点は注意を要する」と付け加えている。
この300万例の分娩に関するカナダ研究では,羊水塞栓発生率は多胎分娩10万例当たり14.8例,単胎分娩10万例当たり6.Oで,オッズ比は2.5である。単胎妊娠の180例中24例は死亡例であった。
危険因子は診断に有益
Kramer博士らは「この研究における13%という致死率は,先行の症例シリーズ(症例集積研究)で報告さ枠ている値に比べてきわめて低く,カリフォルニアでの住民対象研究(Gregory MD.et al.Obstetrics & Gynecology 1973;42:234-244)や英国の自発的登録(Tuffnell DJ.et al.BJOG 2005;112:1625-1629)における値の半分に過ぎない。症例シリーズに報告されている致死率は重度例の選択的報告に起因する発表バイアスを示睦している」と述べている。
今回の研究では,致死例に見られる強力な関連は過剰診断ないし誤診に基づいているとして無視するのは困難であった。ピッツバーグ大学医療センター(ペンシルベニア州ピッッバーグ)のJason Moore博士はLancetの論評(2006;368:1399-1401)で,「羊水塞栓の特徴は低酸素症,ショックを伴う低血圧,精神状態の変化,播種性血管内凝固症侯群(DIC)など幸含む多様な臨床症状の急性発症」としている。同博士は自身の臨床経験から「患者状態の劇症・急速進行は例外というより通例である」と述べている。
同博士によると羊水塞栓の診断は今なお臨床診断で,鑑別診断は幅広い。鑑別診断の基本として,肺塞栓症,空気塞栓,出血,胃内容物誤嚥,麻酔合併症,アナフィラキシー,敗血症ないし全身性炎症反応症侯群(SIRS),心筋梗塞,心筋症,子癇,輸血反応が挙げられる。
診断は臨床状態め観察に基づいて行われ,危険因子は正確な診断を行ううえで役立つ。同博士は診断が困難であり非致死性障害の過剰診断は珍しくないことから,羊水過多と子癇が羊水塞栓に関連していると決定できるようになるには,・さらに研究が必要であると注意を喚起している。
体量減少,低体童は要注意
前回の妊娠中に顕著な体重減少があった妊婦は要注意である。2回の妊娠の間の顕著な体重減少は早産リスクを高める。2回続けて同一施設で分娩した1,241例の研究は「妊娠と妊娠の間にbodymassindex(BMI)がかなり低下した女性は早産りスクが高く,前回が早産であった場合はさらに高くなる」と結論して
いる。
ケースウェスタンリザーブ大学(オバイオ州クリーブランド)のBrianMercer博士らは,American Journal of Obstetrics and Gynecology(2006;195:818-821)で「BMIが5kg/m2以上低下した女性は2回目の妊娠における早産の頻度が高まる(9.3%対21.1
%)」と指摘している。ただし,統計学的有意差が認められたのは1回目の妊娠が早産となり,BMIが5kg/m2以上低下した女性のみであった。
1回目の妊娠が早産であった女性で2回目も早産であったのは33.6%であったのに対して,1回目の妊娠が満期産であった女性で2回目が早産なのは8.O%であった。2回以上妊娠した女性,あるいは間に流産を経験した女性は研究から除外された。
周知のように,妊娠前の母体の低BMIは早産に関連している。先行研究の知見によると,妊婦7,589例の前向き検討では妊娠前の低体重(BMI.19.8kg/㎜2未満)は早産の確率をほぼ倍増させた(A0R1.98)。妊娠後期の不適切な体重増加は早産リスクを高め,AORは1.91であつた(Siega-Riz AM,et a1.Journal of Nutrition1996;126:146-153)。
感染,サイトカインとは無関係
Mercer博士はAmerican journal of Obstetrics and Gynecology (2006;194:1176-1184)に発表された別の先行研究の筆頭研究者でもあり,そこでは早産を繰り返す女性に固有の特徴の識別を試みた。この研究は反復性自然早産(rSPB)27例,単発性自然早産(iSPB)241例と反復性満期産(rTB)969例を調べた。rSPB例は妊娠前に低体重(P<O.O001)かつ低BMI(P<O.OO1〉で,100ポンド(約45.4kg)未満(P=O.008)ないしBMIが19.8kg/m2未満(P=0.001)であった(症例は米国中西部のオハイオ州から集められ,体
重を含む全データはこの女性群に関するものである)。
同博士らは「第2週と第24週にrSPB群はなお低体重でやせ気味で,iSPB群とrTB群に比ベビショップスコアが進行していた。超音波検査によると,rTB群,以前のiSPB群,現在のiSPB群とrSPB群で頸部長が次第に短縮し,既往が悪化するほど頸部長の短縮の頻度が高まった(P〈O.001)。頸部長は妊娠前の体重,BMIが低い女性のほうが短かったが,身長とは無関係であった。第22~24週でrSPB群は子宮収縮と子宮収縮抑制薬投与がより頻繁であったが,感染や抗薗薬治療の頻度は変わらなかった。現在の妊娠におけるSPB群では既往のいかんにかかわらず胎児フィブロネクチンが高レベルで,膣出血が高頻度であった。母体のコルチゾルと副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)はiSPB群とrSPB群のほうがrTB群より高かった(p:O.O01とP=o.O027)。この知見は現在の妊娠におけるSPBでより明瞭である。ただし,母体のサイトカインはiSPB群でもrSPB群でも増加しなかった」と述べている。
同博士らは2006年4月の先行論文で「rSPB群はiSPB群ないしrTB群に比べ,やせ気味で頸部が短くて収縮しやすく,ピショップスコアが進行している」と結論している。早産予測研究(ThePretemPredictionStudy)には早産に関する多くの追加情報があり,アラバマ大学(アラバマ州バーミングハム)のRobertL.Goldenberg教授らがSeminnars in Perinatology (2003;27:185-193)に発表した研究とミシガン州立ウェイン大学(ミシガン州デトロイト)のIsrael Hendler博士らがAmerican Journal ob Obstetrics and Gynecology(2005;192:882-886)に発表した研究などがある。
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