東京日和@元勤務医の日々さまよりおすすめの週刊誌です..。*♡
[衝撃の医療格差]今週の週刊ダイヤモンド
東京日和@元勤務医の日々 2007.04.02
http://blog.m3.com/TL/20070402/1
50頁もの医療格差特集で、さすがに読み応えあります。
とりあえず、目に付いたネタからいきます..。*♡
ワースト3は埼玉、茨城、千葉
全国で深刻化する医師不足問題
(週刊ダイヤモンド2007/4/7 p68-69 )
医師の“偏在”や“地域格差”が盛んに報道されている昨今。
だが、埼玉県をはじめとする首都圏でも医師は枯渇状態となっている。
まさに崩壊一歩手前の医療の現実に迫った。
埼玉県北部に在住し、「これから子どもをつくそう」と考えている読者にとっては、由々しき事態である。
「もう、分娩を制限するしかない。その先にあるのは産婦人科自体の閉鎖です」
深谷赤十字病院(埼玉県深谷市)の山下恵一副院長は吐き出すようにこう語った。それは事実上、「埼玉県北部での出産が難しくなる」ということを意味する。
埼玉県で年間200件以上の分娩を手がける医療施設は6施設。うち5施設は南東部に集中している。それ以外のエリアで産科救急医療を手がける施設は同院のみだ、その深谷赤十字病院産婦人科の閉鎖の危機に瀕しているのである。
2006年の同院の年間分娩数は727件で、中規模程度の医療機関としてはごく平均的な数字だ。問題はそれを担う医師の数である。常勤医師は全部で4人。当直を月に4回こなし、ほぼ眠らず翌日も夕方まで働く生活を続けている。このほか10日間は夜も自宅待機し、携帯電話で呼び出される、月の半分は不眠と緊張に耐える生活だ。当然、盆も正月もなし。
昨年12月、疲労が限界に達した四十代の女性医師が、辞表を提出した。今春からは三人で産婦人科を支えていくことになる。
産婦人科だけではない。同院の内科医師はこの二年間で7人減った。耳鼻科もこの5年間ほど閉鎖していたが、最近、60歳を過ぎた常勤医師を迎え、ようやく再開。小児科は4人の医師で回している。
最近、テレビや新聞でクローズアップされている医師の“地域格差”問題。“西高東低”といわれ、特に東北地方における医師不足がはなはだしいといわれてきた。
病院を立ち去る医師たち
だが、現実はもっと深刻である。
下の表をご覧いただきたい。厚生労働省の調べによれば、人口対比医師数のワースト1位は埼玉県。続いて茨城県、千葉県の順となっている。神奈川県もワースト7位だ。いったい、医師たちに何が起こっているのか。
原因の一つは、04年に導入された「新医師臨床研修制度」だ。公募により、全国から好きな研修先を自由に選べるようになつたため、新人医師が大学に残らず、都会の病院に集中するようになった。多くは研修を終えても地域に戻らない。従来は大学が周辺の関連病院に医師を派遣していたが、それができなくなってしまった。
新人の供給がストツプされた病院では人手不足に陥った。もともと医師の高齢化や、女性医師の休職、退職が問題化していたが、とどめを刺された格好だ。特に時間外診療が多い小児科、産科は厳しい。これらの診療科は少子化のあおりを受け、人件費も制限されやすい。
二つ目は、患者の権利意識の高まりである。影響を与えたのが、ここ数年、次々と報道された医療訴訟事件だ。もちろんこれらの多くは、医療提供側が大きな問題を抱えていることが多い。だが、過敏になった患者たちが、時に必要以上に医師を追い詰めていることも事実だ。
ストレスを抱える医師たちの意欲をさらに低下させているのが「待遇の悪さ」である。05年の厚生労働省の調べによれば、開業医の平均年収は約2650万円(※1)。これに対し、勤務医は約1230万円だ。「QOL」(クオリティ・オブ・ライフ)とは患者の生活や人生の質を意味する言葉だが、若手医師たちのあいだで囁かれている言葉は「QOML」(クオリティ・オブ・マイライフ)。報われない仕事で心身をすり減らすのを嫌い、病院を退職し開業に走る「立ち去り型サボタージュ」が増えている。
この事実を端的に表しているのが、厚生労働省の「医療施設調査」である。06年と、前回調査の04年の緒果を比べてみると、一般診療所(病院)の純増は391ヵ所であるのに比べ、無床の診療所(クリニック)の純増はなんと3763ヵ所に上る。
「開業者を含め、この2年間で1万人近い医師が病院からクリニックに移っている可能性がある」と日本医療労働組合連合会の池田寛中央副執行委員長は指摘する。
「医師は“偏在”ではな<“不足”している」
医師の配置基準は入院患者16人、外来患者40人に一人以上と決められている。だが、常勤医師の配置基準充足率の全国平均はたった36%。非常勤を含めても83.5%だ。この基準は50年以上も前に定められたものである。
にもかかわらず、厚生労働省では、「医師は毎年約7700人誕生しており、退職などを差し引いても毎年3500~4000人ずつ増える」とし、「医師“不足”ではなく、“偏在”が問題」としてきた。
これに対し、「医師の絶対数自体が不足している」という声があちこちから上がっている。
医師不足問題に詳しい、済生会栗橋病院の本田宏副院長は言う。
「OECD人口1000人当たりの平均医師数は3・1人。日本は大きく下回り、2人だ。OECD諸国並みにするにはあと21.7万人が必要だ。しかも、日本の医師数は27万人とされるが、実働医師数はもっと少ない。ところが国は1986年以来、医学部の定員を削減してきた。昨年、やっと医師不足が深刻な10県のみ、10年間10人ずつの増員を認めたが、施行にはハードルがある。入学定員の五割以上を対象に奨学金を設けねばならないからだ」
さらに本田氏は「病院職員の数も米国などと比べると極端に少ない」と指摘する。米国には救急救命士や秘書といった専門職が大勢いるが、日本では医療保険の診断書作成から点滴経路の確保まで医師がこなす。おかげで日本の医師の労働時間は長く、59歳までの平均は週60時間以上となっている。
秋田県立脳血管研究センターの安井信之所長も「もはや一部の地域の問題ではない。充足しているのは東京だけ。新医師臨床研修制度の導入後、東京の医科系大学が次々に分院を開設し、新人の囲い込みに精を出したからだ。おかげでその他の地域は全国的に医師の数が不足している」と強調する。
過重労働で疲労困憊した医師たちに命を委ねられるのか--。WHOの評価によれば、日本の医療は「健康への到達度」において世界ナンバーワン。だが、このままではその地位も危うくなりそうだ。
(※1)
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