今日は内科雑誌から拾ってきました..。*♡
I.救急医療システム
2.本邦の救急医療の疫学:内科的視点から
石松伸一
〔日内会誌95:2403~2407.2006〕
要旨
救急医療の現状を示す統計資料にはさまきまな報告があるが,日本全体の内科的救急疾患について調査されたものはない.ここでは救急医療の疫学について述べるにあたり,代表的救急患者を「救急自動車で搬送されたもの」と考え,総務省消防庁の統計資料を中心に解説する
Keywords:救急自動車搬送,急病,高齢者
監総務省消防庁発行の「平成17年版救急・救助の現況」によると,平成16年度中に日本国内で救急自動車が出場した502万9,108件のうち,急病によるものは295万3471件で全体の57・8%を占めていた・この出場件数全体に占める急病の割合は年々増加傾向にある・(図)
1.年齢区分による急病の割合(表1)
急病で救急自動車で搬送された人員の割合を見てみると,高齢者が48・7%,成人が43.2%と両年齢区分で9割以上を占めていた.一方同じ年齢区分の中での急病の割合は高齢者が最も高く66.5%,ついで乳幼児,成人,少年,新生児の順であった.平成12年度の国勢調査に基づく年齢区分別全人口に対する急病搬送人員も高齢者が6.09%と最も高く新生児・乳幼児と成人は1%台,少年は0.5%弱であったことからも高齢者の急病による搬送割合の高いことが明らかである.
因に曜日別では月曜日(14.8%),日曜日(14.6%),金曜日(14.5%)の順で多く水曜日は13.8%と最も少ない.月別では12月,1月(ともに9.3%)が多く,6月,9月(ともに7.7%)が最も少なかった.
2.急病による年齢区分別傷病程度別搬送
人員の状況(表2,3)
初診時の医師の診断による重症度分類では,軽症が最も多く48.9%,ついで中等症が40.3%,重症9.0%,初診時死亡が確認されたものは1.7%であった.これを大都市(政令指定都市および東京都特別区)とその他の市町村を比較してみると,大都市では重症6.4%,軽症54.0%であるのに対しその他の市町村では重症10.4%,軽症46.3%とその他の市町村の方が急病で搬送される重症度が高い傾向にある.
傷病程度では全体では中等症以上(中等症,重症,死亡)は51.0%あったが,高齢者に限ると中等症以上が66.4%となった.一方乳幼児,少年は軽症の割合が高く各年齢区分のうち75%~80%を占めていた.
3.急病による疾病分類年齢区分別,傷病
程度別搬送人員の状況(表4,5)
医療機関初診時の医師の診断に基づく傷病名を国際疾病分類(ICD)により分類した.全年齢層では脳疾患(11.5%),消化器系(10.9%),心疾患(9.8%),呼吸器系(9-8%)の順であるが,高齢者では心疾患の割合が増加し,脳疾患(16.2%).心疾患(140%)となっている.
一方成人では消化器系が最も多く,ついで精神系,脳疾患が多い.少年以下では呼吸器系,消化器系の順であった.
傷病程度別では,初診時死亡が確認されたもののうち心疾患が42.4%を占めていた.重症のものに限定すると脳疾患が32.2%と多く,心疾患,呼吸系がこれに続いた.
まとめ 総務庁消防庁の資料を元に我が国の救急医療の疫学について内科的疾患を中心に解説した.救急車での搬送を要請する数は年々増加傾向にあり,その中でも急病の割合が増えているが, この中でも高齢者の比率は高く,しかも他の年代とくらべて重症度が高い.また急病の疾患別では脳疾患,消化器系,心疾患,呼吸系の順であった.今後,予防医療やかかりつけ医制度の充実によってこの急病患者の動向は変化する可能性はあるが,疾患別頻度や重症度に応じた医療側の対策が重要であることに変わりはない.
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